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 ――DSによって成功モデルができた訳ですね。通常のSM業態である「マックスバリュ」浮上のきっかけは何だったのでしょうか。
 
 出戸 『ザ・ビッグ』への転換と同じ年の2010年4月に苫小牧市の『マックスバリュ新花園店』を建て替えました。王子サービスセンターから承継した旧花園店は年商11億円程度でしたが、建て替えた新花園店は年商30億円近くまで売上げが増えました。もちろん売場面積は増えていますが、イオンの中でも“新花園モデル”と呼ばれるくらい大きな変化がありました。DSとSMの成功が軌を一にして生まれたのです。そのエッセンスを他の『マックスバリュ』店舗の改装に活かせないかと数をこなしていきました。そのころの改装では10%の伸びを目指す程度でしたが、最近は30%増の店も出ています。ある程度の伸びが確保できるようになると、それこそ転がるように雰囲気も良くなっていきました。
 
 ――2012年から改装ペースを早めてどんどん歯車が良い回転を始めました。今もその勢いは続いていますが、顧客の支持を集めているという実感、手応えはありますか。
 
 出戸 私が社長になった3年前は、とりあえずダウンサイジングしなくて良いというぐらいの時期で最悪期から脱したころです。しかし、会社が成長軌道に乗るほどSMは復活していなかったし、『ザ・ビッグ』でかろうじて赤字を減らしている状況でした。社長に就任したからには悔いが残らないように精一杯やろうと思いました。悔いが残らないようにということは、当然、負のスパイラルに逆戻りしたら(社長を)長くできないと思ったからです。とにかく1日1日を頑張ろうと。
 SM業態は営業時間を拡大した時期で既存店は前年同期比100%をうろうろしている状況。私は、ジョイとの合併の際に経営企画の担当で、我々の弱点は身に染みてわかっていました。当社の一番の問題は、お客さまの支持と売上げが明らかに足りないということ。ここが一番弱いからここを強くしていくことできっと良くなっていくだろうという思いがありました。
 
 では、どう強くするのか。改装しても当たらなかったが、『ザ・ビッグ』への転換で初めて当たった。売上げを拡大していくことを社長になってから絶えず考えていて、既存店の支持を上げるため非効率なことを含めてお客さまの支持を得ることをやっていこうと決めました。最近は当たり前に既存店が前年同月比で100%超えるようになって社員の気持ちも変わりましたが、以前は既存店を巡回していたら「競争が激しいから売上げが上がらない」という感じでした。ところが今は「既存店で100%を割ったら恥ずかしくて会議にはいけない」というように気持ちが全然違います。
 
 ――売上げを拡大して顧客の支持を得るということで改装を進めた訳ですが、MD(販売政策)の見直しなども含めて成長ステージに入っていったということですね。
 
 出戸 試行錯誤です。色んな店を見てこういう店を作ろう、こういう商品を揃えようと様々なことをひとつずつやりましたが、当たったり当たらなかったり。確実にその中でも当たっているものが増えて売上げは伸びるようになってきました。試行錯誤をずっと続けないといけないと思います。その中で新しい発見がまだまだいっぱいありますから。
 
 ――どん底の経験が活きていますね。
 
 出戸 やっぱりあのときには戻りたくないですよね。
 
 ――ところで、ダイエーといちまる店舗の承継で合計何店舗になりますか。
 
 出戸 96店舗です。函館地区はダイエー・グルメシティ4舗と八雲町の1店入れて5店舗の承継です。静内の方面にはグルメシティ富川店もありますが、この店舗は苫小牧エリアに近い。いちまるは14店舗を承継しました。札幌市内のダイエー円山店はマルヤマクラス店として承継しており、当社の札幌フードセンター円山店と相乗効果を持たせていきます。
 
 ――承継した函館のグルメシティの1店舗は休業していますね。
 
 出戸 深堀店を休業中で建て替えの予定ですが、まだ先が見えていません。来年か再来年になるのかは未定です。
 
 ――惣菜などのセンター化が食品スーパー業界で進み始めています。どう考えていますか。
 
 出戸 惣菜センターのような施設を建設する考えは今のところありません。物流センターはイオングループで対応していますが惣菜、精肉などプロセスセンターは自前では作らない考えです。畜産関係は2社の取引先と業態別に組んでやっています。将来的には惣菜センターなどは必要だとは思っていますが、自社でやるのが良いのか、どこかと組んだらいいのかはまだ決めていません。いずれにしてもセンター化は両刃の剣です。自前でやって技術レベルが上げられるかどうか。上がらなければお荷物になるケースも多い。
 
 ――ダイエーといちまるの承継で売上高は1000億円を超えますね。
 
 出戸 年商は1160億円ぐらいになるでしょう。各エリアで上位を狙っていきます。函館地区は現在4番手ですが早くトップを狙い、苫小牧ももっと売上げを上げていきます。帯広・十勝は2~3番手ですが、まず帯広市内で早く地域一番店になれるようにしたい。
 
 ――承継したいちまる店舗は『ザ・ビッグ』などの業態変更を予定していますか。
 
 出戸 しばらく運営してからどういう業態がマーケットに合うのかを研究します。もちろん、『ザ・ビッグ』転換も選択肢に入っていますが、どちらかというと『マックスバリュ』でやりたい。広域商圏を狙うには『ザ・ビッグ』が適していますが、帯広・十勝地区では安い商品を大量に買う層は限定されていると思います。ただ他社と同じようなSMになって、お客さまが魅力を感じなければ、『ザ・ビッグ』への転換も進めます。毛色の違うスーパーがあっても良いのかもしれません。
 
 ――最後に、ひとつの流行と言えるインストアベーカリーの対応についてはどう展開していきますか。
 
 出戸 当社のインストアベーカリー『マックスベーカリー』は現在30店舗ほどに入っていますが、店舗の総合的な魅力を出すためにやるという位置づけで、それだけで採算が合うところまではいってない。お客さまのインストアベーカリーに対する受け止め方は、仕入れのパンとは明らかに違います。インストアベーカリーを途中で辞めると来店客数が減るのです。今後もチャレンジは続け、特に都市部の店舗では導入していきます。(終わり)
(※2015年10月9日18時30分記事一部修正しました。)

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