来年度には、国民が当たり前に望むサービスを、全国どこにいても共通にできるようにするべきだと思う。そのための基盤となるマイナンバーやマイナンバカードの制度に関する権限も、デジタル庁に移管した。マイナンバーカードについては、6月2日時点で発行枚数が5663万枚となったが、健康保険証や運転免許証との一体化も進め、スマートマイナンバーカードさえあれば、どこからでも簡単に住民サービスが受けられることのできる環境をつくっていきたいと思っている。オンライン診療は、4月から初診が解禁された。オンライン教育も数千人のデジタル専門家のサポートを受けられる環境整備を進めている。

 デジタル庁の新たな公務員制度を今年の夏から始める。行政でも民間でも、組織の要は人だ。デジタル庁700人の職員のうち300人は民間の人。高度なスキルを持った人たちが国、自治体、民間を行き来することによって、必要な人材が育成されていくと思っている。こうしたデジタル化を国全体の成長の源泉にする。私の政権では、グリーン、デジタルを車の両輪として日本経済の柱に据えた。デジタル庁の仕事の範囲は広く、与えられた役割は大きく、容易に解決できる課題ばかりではない。当たり前のことを実現するという強い意志を持ち、大胆な改革を進めてもらいたい。物価高に対応するために、こういった成長戦略の推進、改革は待ったなし。カーボンニュートラル、脱炭素社会、そしてデジタル。これらの課題を乗り越えて、今のピンチをチャンスとして生かしていく。ここに、未来の日本の成長のカギがあると確信している。

 終わりに、外交安全保障について話したい。ロシアのウクライナ侵攻によって、日本の安全保障は大丈夫かといういろんな方々の声がある。もはや世界は一国だけで自らの国を守ることができない時代になったと思う。日本には日米同盟がある。日米同盟が機能できる同盟にすることが、責任ある政党の役割だと思っている。この日米同盟がかつて機能不全に陥ったことがある。それは野党政権、鳩山由紀夫さんが総理大臣だった時だ。世界で一番危険とされる沖縄県普天間飛行場の移設問題を日米で10数年にもわたり話し合い、辺野古移設を決定した。しかし、政権交代後にいきなり最低でも県外への移設と発言した。その発言で日米間の信頼感がなくなり、日米同盟が機能不全に陥った。その時に何か起こったか。最初に動いたのは中国だった。尖閣諸島を警備する日本の海上保安庁の巡視船に中国の漁船が衝突、船長を逮捕すれば良かったが、中国の圧力に屈してすぐに釈放してしまった。

 そうした状況を見て、ロシアのメドベージェフ大統領が初めて北方領土の国後島に足を踏み入れた。ソ連時代さえそうしたことがなかった。また、韓国の大統領が、竹島に初めて上陸したのもその時だった。外交安全保障というのは、このように冷徹であるということをぜひ皆さんに理解をいただきたいと思う。私たち第二次安倍政権をつくり日米同盟を機能するものにするために、三つの安全保障の法律をつくった。特定秘密保護法、国家安全保障会議設置法、そして平和安全法制だ。戦争法案と野党の人たちに言われた。徴兵制を復活するとも非難された。法案が必要かどうかではなく、真摯に安全保障に向き合わない批判だけだった。

 当時、北朝鮮から日本にミサイルが何発か飛んでいた状況だったが、今年はすでに26発も飛んでいる。日本を北朝鮮のミサイルから守ってくれているのは、アメリカの艦船であり日本の自衛隊だ。アメリカの艦船が攻撃されても、日本の自衛隊は攻撃できず守ることもできなかった。それを平和安全法制という法律をつくって改正、憲法解釈を変更して集団的自衛権を行使できるようにした。日本を守っている米艦が攻撃されたら、日本の自衛艦が攻撃して守ることができるようになった。こうしたことによって、機能できる日米同盟になっている。その前提として、自分の国は自分で守っていくことも大切。ぜひ皆さまにもご理解をいただき、いろんな意見交換をしてもらいたい。(終わり)



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