高校の部活にもさまざまあるが、北海道札幌東商業高等学校(札幌市厚別区厚別中央3条5丁目6-10)のマーケティング部は、新札幌の地域経済を盛り上げ、地域の活性化に取り組むユニークな部だ。そのマーケティング部が、地域活性化をさらに充実させようと、企業や団体に総合的なコンサルティングサービスを行っている企業法務Matching合同会社(札幌市北区)と連携することになった。同社が持つ企業や団体のネットワークを生かし、今年度はプロバスケットチーム「レバンガ北海道」とのコラボレーションで地元を盛り上げようと活動を開始した。(写真は、札幌東商業高校マーケティング部と企業法務Matchingの打ち合わせ)

 北海道札幌東商業高等学校(以下、東商)のマーケティング部は、1年生から3年生まで例年20人を超える部員が在籍する。10数年前から、地元企業とのコラボで「コロッケ」や「味噌だれ」など新商品を開発、新札幌の商業施設などで販売して地域活性化に繋げる取り組みを続けてきた。近年は、授業でも生徒と地域社会の関りを深める機会が増えており、マーケティング部はそうした流れを深掘りする役割も担っている。

 昨年11月、島根県松江市で開催された第30回全国高等学校生徒商業研究発表大会。北海道大会を勝ち上がった東商マーケティング部は、上位には食い込めなかったものの、「奨励賞」を受賞した。同部顧問の秋本直人さん(流通経済科科長)は、「この10年間は、全国大会に出場することも難しかったが、昨年と一昨年に全国大会への出場を果たしました。ただ、一昨年はコロナ禍でビデオ出場となり、順位を付けない大会だったので、昨年の大会がこの10数年では初めての全国大会での受賞でした」と話す。

 マーケティング部が発表したのは、地元新札幌のカラオケ店「ピロス」とジョイントして商品化した「幸せのハピロスごはん」の事例。カラオケピロスは、もみじ台団地に住む高齢者もグループでよく利用していたそうだが、コロナ禍でこの地区の客足は遠のいてしまった。コロナが落ち着いてきたにも関わらず客足が戻ってこないことから、マーケティング部とピロスが、店舗で提供するメニューとして高齢者に優しい「幸せのハピロスごはん」を考案。部員たちはもみじ台を回ってチラシをポスティング、常連客の来店を促した。

「幸せのハピロスごはん」を考案するにあたって、マーケティング部は料理研究家、星澤幸子さんのアドバイスも受けた。そうして誕生したのが、白米よりも栄養素の高い分づき米を使用したおにぎりと、カラオケピロスの名物「ピロザンギ」が入った、北海道野菜たっぷりの味噌汁が付いた「幸せのハピロスごはん」だった。高齢者にこれを食べてもらい、元気になってほしいという生徒たちの願いも込めたメニューだった。

 昨年8月から3ヵ月ほど提供したが、期間中は店をよく利用していた高齢者はもちろん、仕事帰りのサラリーマンや主婦層にも人気だった。コロナ前の客足には及ばないものの、来店のきっかけづくりに一定の成果があったという。「幸せのハピロスごはん」に取り組むにあたって、マーケティング部は企業法務Matchingの久保智人代表社員CEOの紹介で、星澤さんの協力を得ることができ、その波及効果によってより大きな展開が可能になった。

 こうした下地を生かして、企業法務Matchingは東商マーケティング部と連携、今年度から本格的に同部の地域活性化の取り組みに協力していくことになった。今年度のテーマになっているのは、「レバンガ北海道」とのコラボによる新札幌地区の活性化。「レバンガ北海道」は、厚別区とまちづくりに関する連携協定を締結しており、そちらとも連動する形で取り組みを進めることにしている。

 現在は、具体化に向けてテーマを絞り込んでいる段階。「緑のチームカラーを生かしたファッションを選手にコーディネートしてもらい、新札幌の店舗で発信してもらう」、「選手が参加するリユース、リサイクルのイベントでSDGsを発信してもらう」、「厚別産のニラを使ったコラボ商品を開発する」など、たくさんのアイデアが出ているという。

 マーケティング部部長の櫻井翠さん(3年)は、「部活を通じて、人前で話す自信がつき成長していることを実感しています。部員みんなも同じ気持ちで、商品や広告を見る視点も変わったと思います」と話す。地域社会との結びつきを自ら企画、実行するマーケティング部の活動が、生徒の成長も促す好循環を生んでいる。

 折しも今年は、JR新札幌駅開業50周年の節目であり、旧市営住宅跡地を利用して整備された、複合施設が集積する新街区「マールク新さっぽろ」が、まちびらきをする年でもある。「レバンガ北海道」と「東商マーケティング部」はそんな記念すべき年に、どんな活性化の果実を生み出すだろうか。


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