流通業界に身を置いて55年、アークス(本社・札幌市中央区)の横山清社長(81)は、食品スーパー(SM=スーパーマーケット)の合従連衡、淘汰再編を自ら仕掛けてきた当事者だ。体験から導き出される経営観は、SM業界の来し方行く末を見通しているようだ。その横山社長が、業界の10年戦争を予言する。これまでも大手、中小が入り乱れた戦いを繰り広げてきたSM業界だが、今度の戦いは次元の違う長い戦いになると言う。年頭インタビューの最後をお届けしよう。IMG_1092(写真は、横山清社長)

「我々はそういう(②の後段の記している北海道が抱えている様々な課題への)危機感をもって経営している。2大メガ流通のイオンとセブン&アイ・ホールディングスにしても我々と同質の問題を抱えているだろう。そういう意味ではこれから10年戦争と言えるような状況が出てくると思う。
 北海道の状況を端的に表しているのはJR北海道。基本的に官ではなくて民の活力と努力で経営できると思われていたことが、どうにもならないことが分かった。それと似たようなことが他でも起き始めている。なんとかやれるという状況は、いずれ瓦解していくことになる。そのことが深刻な問題として横たわっているのが現状だ。10年戦争はそれらを含めてのことを指している」
 
「アークスグループは、東北ではユニバースが先端的な店舗を何店か出してうまくいっているが、トータルで言うと我々はこの数年で内部固めをやってきた。競合はどんどん店舗を出すが、我々は東北で2社の合併など、所謂バックヤードを固めようと動いてきた。その効果も出ている。
 今は、どこかに店を出しても、それがすぐ黒字になって経営に貢献することはないだろう。苛烈な競争をやっているから相手を潰さないとどんな素晴らしい店でも黒字にはならない。店を出せば良いというものではない」
 
「我々は、システムを統合するための基盤構築プロジェクトを3年間続けてきた。システムを変えれば(経営が)良くなる訳ではないが、システムがないと画期的なことはできない時代だ。三浦紘一会長の考え方で彼を中心にコンサルを決めて相当練り込んだ結果、一番難しいと言われているSAPのシステムをやろうということになった。5年間で100億円の投資をする。今年から始まって来年には新システムの骨格が具体的に動き始める」

「システムを統合すると、アークスグループの特色である八ヶ岳連峰経営の良さをある意味で失ってしまう。統合は規格化、標準化、集中化を進めることになるからだ。そうすると地域の個性がなくなってしまう。味も盛り付けも違うような地域の食生活をサポートしていくためには、相当大きなシステムのキャパシティを確保しなければならない。それを十分達成できるようなシステムがSAPだ」

「SAPシステムに統合する一番のメリットは、地域の特性を活かしながら規模のメリットも活かせる点。我々食品スーパーの場合、3万アイテム以上があって生鮮を入れるともっとアイテムが多くなる。アイテムを絞って効率を上げる時代ではないので、アイテムを増やしても在庫管理や現時点での単品販売情報も分かるようにする。データマイニングが強くなれば、食品スーパーの新しい世界が拓けてくるだろう」

「何とか5年以内に実用化したい。そのために100億円を注ぎ込む。1店10億円で建設すると仮定すると10店建てられる額だ。その店舗が年間20億円を売り上げる店だとすると、10店で200億円の規模になるになるくらいだ。どっちを取るかという経営判断の中で、我々はシステムに投資することに決めた。そういう意味では我々のこれからの展開は外にはあまり見えないから地味になる。表面上は勢いがないように見えるが、中身が大きく変わっていく。10年戦争をこうやって戦うことになる」(横山社長のインタビューを本サイトが構成。終わり)


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