苫前郡羽幌町特産の甘えびなど、えびの漁獲から製造加工、販売まで6次化事業を展開している有限会社蛯名漁業部(本社・同町)は、これまで廃棄していたえびの頭や殻などをペースト化する事業を開始した。これによって廃棄量を大幅に削減、地域からSDGsに貢献していく。(写真は、えびをペースト化する融砕機を紹介する蝦名桃子専務)

 蝦名漁業部は、1972年設立で北るもい漁業協同組合に所属している。第51高砂丸を保有、漁期である3月から11月までえび籠漁業を行っている。羽幌町では甘えびやぼたんえびが獲れるが、中でも甘えびは同町特産として人気がある。同社は、この甘えびのおいしさを広く伝えることを目的に、2014年から甘えびを使った加工品事業に進出、「酒蒸し甘えび」が「北のハイグレード食品」(道が選定)を受賞するなど、6次化漁業会社として実績を積んできた。

 2017年には、日本海オロロンライン(国道232号線)沿いに工場併設の「甘えびファクトリー」を開店、直売で甘えびを使ったパスタソースやコンフィ、ラスクなどの販売のほか甘えびを使った食事メニューも提供している。加工品は、イオンやコープさっぽろのギフト商品としても採用されており、シーズンには1ヵ月で1万箱以上の購入があるという。

 こうした中で、頭を悩ませてきたのが、加工品製造後に出てくるえびの頭や殻など。年間数トン単位で出てくるため、廃棄するだけではSDGsの観点からもふさわしくない。2年間にわたる試行錯誤を経て、超微粒粉砕機の専門メーカー、増幸産業(本社・埼玉県川口市)の融砕機を約400万円で導入、昨年ペースト化することに成功した。「調理機械の展示会に足しげく通って、ようやく見つけたのがこの機械でした。粒のないペーストが製造でき、これまで廃棄していた頭や殻を有効利用できるようになりました」と同漁業部の蝦名桃子専務(46)。

 ペーストにしたものは、えぐみのないえび風味があり、既に道内コロッケメーカーに納入を開始。同社では、自社でもこのペーストを使ったパスタソースやラーメン用スープを開発、5月頃からBtoB(企業間取引)、BtoC(消費者取引)で販売する。また、煎餅商品の開発も急ぐ考え。蝦名専務は、「甘えびのおいしさを伝えるために、廃棄物を出していたのでは本末転倒。今回のペースト事業で廃棄物が減少し、SDGsにも役立つのでは」と話している。
(写真は、加工場に併設している蝦名漁業部の甘えびファクトリー)


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