北海道経済部産業振興局次世代半導体戦略室の主催による「次世代半導体とほっかいどうの未来in札幌」が2024年2月8日、札幌市中央区の道新ホールで開催された。Rapidus(ラピダス)の千歳進出を受け、道は半導体の製造、研究、人材育成などが一体となった複合拠点の実現を図ることを目的に、道民理解の一環として全道でシンポジウムを巡回開催しており、札幌会場が今年度最後のシンポジウムとなった。リアル参加とオンライン参加で約900人が聴講した。(写真は、半導体ウエハーを紹介する葛西誠也氏)

 Rapidusの小池淳義社長のビデオメッセージに続いて、同社の清水敦男専務執行役員が講演。清水氏は工場建設が順調に進んでいると報告、「今年7月以降の建設ピーク時には、1日900台のトラックが市内を走ることになるが、工事現場まで左折優先の経路を確保して、地域に渋滞ストレスを与えないようにする」と話したほか、人材採用に触れ、「毎月20人~30人が入社しているが、いずれもこの業界で輝かしい業績を上げてきた人たち。当初のプラン通りの採用ができているが、女性のエンジニア比率が少ない」として、ものづくり産業に女性が参画する教育環境などをつくることの必要性を訴えた。

 北海道大学総長補佐で、量子集積エレクトロニクス研究センターの葛西誠也教授は「半導体の今と未来について」をテーマに講演。Rapidusが進めようとしている2ナノメートルの次世代半導体について、「2ナノメートルは原子サイズに近く、シリコン原子を4個ずつ正しく並べることが必要になる。人類史上で最も精緻なものづくりになるだろう」と述べた。さらに、「半導体は、デジタルと農業や漁業など一次産業の現場を繋ぐ鍵になり、どうすればこうした現場でうまく使えるか、利用方法を見つけることが大事だ」とした。

 続いて日本経済新聞の太田泰彦編集委員が登壇、「半導体で地域がどう変わるか」をテーマに話した。太田氏は、「既存の産業が次世代半導体をどう使うかに目覚めることが大事。どう使うかを考えることが半導体産業の一翼を担うことに繋がる」と語った。北大理学部出身の太田氏はクラーク博士に触れ、「クラーク博士は当時最先端だった、マサチューセッツの農業を紹介したことによって北海道にインパクトを与えた。今回の次世代半導体は、その明治9年以来のインパクトを北海道に与えるだろう」と述べた。


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