2022年が始まった。コロナ禍3年目に入り、ウィズコロナ、アフターコロナの経済が変革を伴って動き出す起点の年となりそう。生活と密着する食品スーパーは、社会と経済の繋ぎ役であり、社会と経済の変化が合流するリアルな現場と言える。北海道や北東北、北関東で八ヶ岳連峰経営を実践するアークス(本社・札幌市中央区)は、地域主権型経営のロールモデルとして着実に歩を進めている。横山清社長(86)に、2022年の食品スーパー業界を展望してもらうシリーズの2回目を掲載する。(写真は、インタビューに答えるアークス・横山清社長)

「コロナ下のスーパー運営で、気をつけたのは、お客さまと共に歩んでいくという今までの運営を徹底して続けることだった。結果として、このやり方は間違いではなかったと思う。コロナ3年目で消費はどう変化していくだろうか。貯蓄に回っていたお金が、消費に向いて景気が良くなるという説があるが、私はそれを全然信用していない。仮にそうなったとしても、それに合わせた店づくりをする気はない。やはり常に言っていることだが、食品スーパーはライフラインであり、生活防衛隊。お客さまの生活をしっかり守っていくことが責務と考えている」

「いずれにしても、自分たちが思うように店を増やしても、それに耐えられるような収益力を持つマーケットではないと、私は見ている。既存のマーケットで頑張っても、現実の問題として競争は激しい。新しい惣菜商品や新しいレイアウトを取り入れても、それでパテント(特許)を取れるわけではないので、次の日には他のスーパーで同じような商品が出てきたりする。必要なことは、今ある店を大事にすることと、リアルとバーチャルが最終的には半々くらいになるような体制をつくっていくことだ。アークスグループの各社には、びっしりと60年間の体験があるわけですから、そういう無形の資産を共有することで、コロナ後の消費変化に対応していきたい」

「札幌中心部でも出店が続いており、各社ともかなりの投資負担になっているはずだ。グループ店舗の影響度合いを精査しているが、今のところ大きな影響は受けていない。当グループも、中央区に1000坪近い土地を手当てしている。取得費はかなり抑えられていると思う。その土地をどうするかは未定だ」

「アークスグループに入りたいというスーパーが、相談に来ている。私たちが、声を掛けるというよりも、受け手の立場。おこがましいと言われることを分かって言うが、今の時点で勝ち組として手を組まない。今、ダメなところは、店舗を取得することも一つの方法。だが、店舗を取得しても、そこで働く人をどう集めるのかという課題がある。働き手の意識も変わっており、時給が高ければ移動する働き方もあるし、そうでない働き方もある。これからは、そういう働き手の意識を汲んだ募集が大切になってくる」

「アークスの八ヶ岳連峰経営に入るスーパーが、一番驚くのは、労働組合がなければその企業内に組合をつくることが前提条件になっていること。組合をつくることを拒否するようではいけない。グループ入りしようとするスーパーが真っ先に言うのは、『組合が必要な労使関係ではなく、ちゃんとうまくいっています』と。私は、組合の存在理由はそういうことではないと思っている。親会社として、組合を子会社につくることは有利な条件でも何でもない。ただ、組合をつくることによって、組合サイドの目線を意識することになり、そのことが経営の存続には必要だということ。匿名や署名でハラスメント問題の通報もある。そこには、誤解もあるので、組合も一緒に入って解決していくことがSDGs(持続可能な開発目標)にも繋がる」

「グループ内の合併もあるので、新しい人間関係と労使関係を構築する上で、組合の役目は大きい。こうした内部の動きは外からは見えないもの。だから、他のスーパーはどんどん店舗を増やしているのに停滞しているのではないかと言われる。それは社長が年寄りだからだ、という尾ひれをつけてね(笑)」(以下、次回に続く)


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