――空港民営化が地域に及ぼす影響は?

 小磯前学長 地域の活性化には、行政があまり口を出さないほうが良い。民間の力が発揮しやすい環境づくりを用意し、市場メカニズムを有効に活用しながら民のダイナミズムを引き出していくことが大切だ。

 関空、仙台で共通していることは「関西」、「東北」と広い地域に目を向けていること。さらにそれをビジネスに繋げていこうとしている。地域に魅力がなければ空港の活性化には結びつかない。官は縦割りになりやすいが、横串をしっかり通しながら民のダイナミズムで新しいものに挑戦していくのがコンセッションだろう。

 地域との協力関係を如何にしっかりと作り上げていくかが根幹。北海道のコンセッションにおける新しい仕組みづくりでもこのことが大きなテーマだと思う。観光は幅広いプレーヤーがいる。そういう人たちをうまく集めているのが仙台国際空港だ。そういう場をコンセッションの中で内製化することによって北海道では有効に展開していくのではないか。

 ――空港民営化への期待は。

 工藤市長 稚内市は日本の一番北にあるマチで人口規模は周辺を入れても少ない。しかし、最北ということで空港、港湾、JR、国道といった交通インフラが整備されている。残念ながら一つひとつは脆弱で、産業や観光で地域の競争力を高めることに繋がっていない。

 道内交通網の毛細血管の先にあるのが稚内市だ。将来を考えると、毛細血管がなくなって壊死するのではという危機感がある。ここで一生懸命頑張ったとしても、交通網がきちんと整備されない限り、地方での取り組みは訴求力がないままだ。

 昨年、国からコンセッションで空港の民営化という話が出てきて、私が最初に国に言ったのは国鉄の話だ。「我々は国鉄民営化による廃線を経験した。民営化は地域にとってトラウマになっている」――と。その後、様々な話を聞いたが、北海道の空の交通網のネットワーク化、高度利用化を図るためだという。民のノウハウをこの地で展開してもらうことによって航空需要を増やすことも可能。そうなれば交通網の整備に繋がり、国の指定を受けている広域観光周遊ルートの活性化にも結び付く。是非そうした優位性を利用しながら、市としても空港活性化に努力していきたい。

 知事は、(コンセッションの)目指すところは13空港全部の活性化という話をしたが、稚内空港には近年小型のジェットが季節便で運航している。70~80席規模のジェット機だが、面白い展開が可能ではないか。あの航空機は遠くない将来、北海道13空港の底上げや都市間を結ぶ面白い存在になるだろう。まずは、広域観光の推進に力を入れながら、共に活性化に努めたいという思いでSPCに期待したい。

 蝦名市長 7つの空港が一緒になることで、空いている時間帯などを相互に利活用してプラスを目指していくことがコンセッションの意味だと思う。関空、仙台の事例を聞いて、「そこまでやるのか」と大きな期待を持った。コンセッションは地域との合併、あるいはM&Aのようなものではないかと思う。

 私は、マチを経営するような感覚で市政を進めていこうと話している。つまり地域が持っている資源を如何に活用するかがマチの経営の要。地域と民間の連携事業がコンセッションに繋がっていくと思う。

 釧路市は、観光を産業に育成して観光で稼ぐことを2005年に策定した観光ビジョンに掲げた。今は第2期のビジョンを作って実行している。250億円の経済波及効果を500億円にしていこうという目標だ。コンセッションを活用しながら、共に一緒になって稼いでいきたいと思う。



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