蒸気機関車(SL)の機関庫と古びた駅舎のような外観から昭和をイメージさせる「あびらD51(デゴイチ)ステーション」が、道内124施設目の道の駅として19日、開業した。昨年9月の北海道胆振東部地震で大きな被害を受けた勇払郡安平町民たちの復興の願いが投影されたシンボル的な意味合いを持つ。地元の歴史と文化、食が織りなす交流拠点は、地方創生の要。「D51」が牽引する道の駅が安平に運んでくるものは何だろう。※動画はこちらの画像↓をクリックしてご覧ください。

(写真は、道の駅「あびらD51ステーション」)
(写真は、高い天井が特長のアトリウム)

 安平町は、平成の大合併によって2006年(平成18年)3月、追分町と早来町が合併して誕生。合併はしたけれど、人口減少、少子高齢化の波はどこも同じで安平町でも活力は薄れる一方だった。

 そこで町は、地域の魅力発信を促進する拠点として道の駅新設を決定、15年から国土交通省の社会資本整備総合交付金約9億円を利用して整備が進められた。かつて旧追分町は胆振と十勝、空知の分岐点として交通の要衝だった。そこには機関区がありD51が多く配備され、夕張や空知の各炭鉱から産出された石炭を運搬、高度成長を影で支えてきた歴史がある。

 道の駅の名称が、公募によって「D51ステーション」に決まったのも、こうした鉄道に関わり続けて歴史を積み重ねてきた風土が、町民の心象風景に生き続けていることを反映している。

 追分柏が丘地区に建つ建物は、左手が機関庫を模したSL展示棟、中央は古き良き昭和の駅舎をイメージしたメイン棟、右手は駅執務室のように佇む農産物直売棟からなる。内部は黒い色調で統一され、骨組みの見える高い天井、大きな木枠の窓、年輪を感じさせる床など旅情を誘うような趣向が施されている。装飾された白熱電球が黒い内装を照らす光景は、凝縮された安平の追憶を想起させるようだ。

 ご当地食材を使った菜の花コロッケやカンロのソフトクリーム、コーンや豆をトッピングした焼きたてパンなどのほか、馬産地にちなんだグッズやアクセサリーなど安平町のショーウインドーのような売り場が広がる。

 開業に合わせて機関庫に置かれる予定だった「D51ー320号機」は、震災の影響で運び込まれるのは6月中旬になる。特急「おおぞら」などに使用された「キハ183系」も展示される。

 安平の過去を未来に承継する結節点となる「D51ステーション」は、交通から交流の要衝として新たな地域の風土を醸成していくターミナルの役割を担うことになりそうだ。
(写真は、SL機関庫内部。D51ー320号機は6月中旬に登場する)
(写真は、D51の雄姿が施された自販機)



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