炭鉱の街だった芦別市の発祥で、苫小牧市や札幌市などに食品スーパー「フードD365」を展開する豊月(本社・芦別市)は、創業の地で展開していた「フードD365芦別本店」を3月31日で閉店した。これによって店舗数は11店舗になり、本社を、本部機能がある苫小牧市に移す。菓子店舗時代から含めて、75年間にわたる芦別での事業展開を終えた。(写真は、3月31日で閉店した「フードD365芦別本店」=2023年3月31日16時頃撮影)

 豊月にとって、「芦別本店」は創業の地の店舗ということで、特別な意味を持っていた。現社長、豊岡憲治氏(77)の両親が樺太・恵須取から引き揚げて、芦別市で菓子・煎餅などの製造販売を始めたのが1948年。菓子販売の傍ら、野菜販売なども始め、食品スーパーに進出したのは、1953年。「芦別本店」は、菓子店舗を増設して建てられた。

 豊岡社長は、大学卒業後に地場食品卸の古谷に入り、数年後に豊月に転じ、1973年に苫小牧市に「見山店」をオープン。以降、苫小牧市を中心に出店を重ねてきた。直近では、芦別市のほか、苫小牧市4店舗、札幌市3店舗、千歳市、恵庭市、北広島市、江別市に各1店舗を展開していた。

「芦別本店」の閉店について、豊岡社長は、「人手不足で、後継人材がいないため」と言う。店長をはじめ、水産や精肉担当者も高齢で、技術面を含めて次を任せられる人材がおらず、「このままでは店舗のレベルが保てない。諸経費や人件費も上昇しており、効率化によるコスト吸収も難しい。2~3年先を考えたら、店舗維持は相当厳しくなるので、年度末の3月で閉めることにした」と話す。

 最終営業日は、セールを行ったため、レジに行列ができるほど混雑した。佐伯店長は「近隣の買い物客からは、残念がる声が多かった」と話す。閉店時間を14時に繰り上げたため、閉店後にも店を訪れる人もいた。豊岡社長は、「もちろん寂しさはあるが、お袋にもいずれ閉めると言っていたので迷いはなかった。本社を芦別から本部のある苫小牧に移すが、私の代で負の遺産はなくしておく」と語っていた。



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