企業再生支援機構は、札幌グランドホテル、パークホテルなどを運営するグランビスタホテル&リゾートの再建を支援することになったが、再建のポイントになるのは、財務や設備投資もさることながら強力な本社機構を再構築することだという声が出ている。両ホテルは、2005年に大和証券系投資ファンドが経営権を握って以降、本社機構が弱体化、現場との緊張関係が途切れホテルマンのモチベーションが低下していたためだ。旧三井観光開発OBは、「強い本社機構を取り戻すことが再生の要」と指摘する。(写真は、札幌グランドホテル)
 
 札幌グランド、パークの2ホテルは、05年に投資ファンド傘下に入って以降、急速にブランド力が低下していった。三井観光時代に強力な本社機構を支えていた優秀な人材が散逸し、ホテルの価値を創造する本社と現場の緊張関係が薄れてしまったからだ。ホテルの価値は設備よりもホスピタリティなど現場のモチベーションに負うところが大きい。
 
「モチベーション低下で、グランド、パークの2ホテルの古き良き伝統は失われつつあった。ファンド傘下で本社機構と現場との関係が噛み合わず、有能な支配人層も辞めていった」とOBの一人は言う。
 
 グランドホテル副支配人だった工藤俊也氏もその一人。その後工藤氏はホテル京阪に移り、現在はホテル京阪社長を務めている。
 
 企業再生支援機構による再建で、財務改善が進み設備投資にも資金投入できるようになるが、再生の要になるのは社員のモチベーションをどう引き出していくかということ。
 
 とりわけグランビスタホテル&リゾートの場合は、本社機構の再構築が最重要課題と指摘する声がある。
 
「本社の指示と現場の提案がぶつかり、揉まれて練られたものでなければ一体感は生まれてこない。旧三井観光時代にはこうしたぶつかり合いの光景は珍しくなかった。ファンド傘下時代に弱体化してしまった本社機構をまず見直すことが欠かせない」(同)
 
 現在、グランビスタホテル&リゾートにはプロパーの須田貞則副社長以下に3人の有能なプロパー幹部が本社、グランド、パークにそれぞれ1人ずついるという。年齢は50歳代1人と40歳代2人。企業再生支援機構がトップをどこから引っ張ってくるのか、そしてプロパー3人をどう処遇するのか、本社機構の強化には欠かせない要素と言えそうだ。 



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