ーー旧マックスバリュ北海道との統合効果と見えてきた課題は。

 青栁 統合効果という点では、SMゾーンのノンフーズ系の品揃えが充実しました。旧マックスバリュ北海道の時には、SMのノンフーズ系はあまり意識せずにいた部分でした。ペットフード、住居用洗剤、衣料用洗剤、オーラルケアなどの品揃えは全面的に見直しました。SKU(在庫保管単位)が増えたこともありますが、確実に成果に結び付いています。
 アウトドア用品や扇風機など、季節商品についてもSMの取り組みが変わりました。これまではSM店舗でこれらの商品を最後まで売り切ろうとしたら、需要が少ない中で売り切らなければならず、無理な売り方をして最終的に利益が残らないことがありました。そうしたこともあって、季節商品の品揃えは縮小していきました。しかし、統合によって、こうした季節商品の売り方を変えることができるようになりました。販売のピークが過ぎたら、SMにある季節商品は、同じエリアのGMSに移して全部を売り切るようにしています。複数業態を持っているからこそ、そのような補完関係が可能になります。ドミナンスの関係で考えると、今言ったような体制で、お互いに相互補完していくことができ始めています。

 人材交流も積極的に行っています。SMの店長がGMSの販売課長に異動するなど、売り上げの規模感が違うところで、マネジメントを経験することで多くの気づきが得られます。また、GMSの販売課長がSMの店長に異動するケースもあります。旧マックスバリュ北海道の頃は、SM店舗ではご当地フェアを行っていませんでした。しかし、統合してからは道産デーの展開を拡大し、ご当地フェアを実施するようにしました。地方では、イオン店舗がなくてマックスバリュしかないエリアもありますから、ご当地フェア、道産デーできちっと品揃えをすることによって、そういった店舗でも売れるようになってきました。

 その時に出てくる課題として、マックスバリュ店舗出身の店長は、ご当地フェアなどを手掛けたことがないため、どのくらいの数量を作っていいのかが分からないということです。そうした場合、GMSの店長や販売課長が支援します。経験者で売り方が分かっているので、こういう売り場をつくって、こういう発注をしようという指導ができます。資本の統合は比較的簡単ですが、人の気持ちを一本化することが、統合の一番大きな課題です。イオンでは、「心と心の合併」というDNAが息づいていますが、人心をそうした形に一本化することに、この2年間腐心してきました。

 ーー一般的に、業態間の統合は難しいと言われています。

 青栁 当社の場合は、GMSとSM、DSの業態同士がうまく融合できていると思います。GMSは、総合力を持っているので、地域ドミナンスのアンカーになる存在。そこが衣食住を扱い、モールでさらに商業集積の厚みが増して、生活のインフラを支えるための基盤という位置付けになります。その周辺にドミナンスをしていくSMが、より足元商圏をしっかりとカバーしてお客さまの日々の生活を支えます。GMSを中心に、SM、DSとフォーマットを持つ布陣を、より磨き上げていくことが可能になりました。

 SMは少ない人数の中で組織横断的に1人が何役も仕事をします。GMSは縦割り社会のようなところがあります。SMでは組織横断的にどのようなマネジメントをすれば良いかという勉強ができます。GMSは、計画表を作って多くの社員を使いながら、どう売り場をダイナミックに提案していくかが勉強できます。DSは、省人、省力の最先端を走っています。それぞれの業態での収益構造の違い、働き方の違い、支えるシステムとかインフラの違いは何なのかを知ることは、社員の資産になると考えています。

 ーーイオン石狩PC稼働1年の成果をどう分析していますか。

 青栁 SM店舗では、店頭に並べることが難しかった商品も、アウトパックで並べることができるようになりました。例えば、焼き鳥や肉関係の炒めもののパックは、GMSでは人手があるのでインストア製造できますが、SMではなかなか手が回らなかった。特に中華のインストア製造は手間暇がかかって、なかなか対応できなかったのです。それが確実に、アウトパックで朝に入荷できるようになり、売り場の出来栄えが全く変わりました。これによって午前中の売り上げも伸びています。

 今まで、SMでやりたくてもできなかった惣菜が、アウトパックで入ってくるので、並べることによって売り上げのかさ上げができるようになりました。GMSも朝にPCから来たものを店頭に並べて、売れ筋であればインストアで不足分を製造するというように、作業に弾力性が出てきます。SMやDS、まいばすけっとでは、極力アウトパックで並べるだけにするというところまで、どう持っていくかが課題です。PCの役割はそういうことだと思います。ただ、どこまでインストアで対応し、どこまでPCに委ねるかの課題はあります。インストアの出来たて訴求の分野は残さなければなりません。その辺りの仕分けが今後の課題になります。



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