旧イオン北海道と旧マックスバリュ北海道が経営統合、新生イオン北海道(本社・札幌市白石区)がスタートして半年が経過した。コロナ禍の中での厳しい船出となったが、旺盛な巣ごもり需要を受けて食品分野を中心に堅調に推移している。新生イオン北海道の最大のポイントは、GMS(総合スーパー)とSM(食品スーパー)という業態の垣根を超えた統合によって、地域での存在感をより高めていくこと。生活のインフラ機能とともに地域貢献をさらに強化、北海道ナンバーワン流通企業の地位をより強固にする考え。新生イオン北海道の青栁英樹社長(59)の統合効果や見えてきた課題などを聞いた。
【あおやぎ・ひでき】1961年3月生まれ。83年4月信州ジャスコ(現イオン)入社、2005年3月イオン佐野新都市店長、07年4月同社マックスバリュ事業本部東北事業部長、13年3月イオンリテール執行役員北陸信越カンパニー支社長、14年3月同社執行役員店舗構造改革チームリーダー、15年4月同社デジタル推進リーダー、17年3月イオン北海道執行役員営業本部副本部長、17年5月同社取締役兼執行役員営業本部長、18年10月社長就任。

 ーー新生イオン北海道のスタートは3月1日。まさに新型コロナウイルスの感染拡大が始まった頃でした。

 青栁 緊急事態宣言が2月28日に道から出された翌日、新生イオン北海道がスタートしました。正直、統合どころの環境ではない中での船出でした。幸い、年明けに新しい組織を決めて人事異動も早めに行い、主要エリアには幹部級の社員を早めに着任させていたので、コロナ禍が始まっても初動は大きく混乱なく立ち上げることができました。

 ーーSM(食品スーパー)とGMS(総合スーパー)の異なる業態を一体化しました。とりわけSMとGMSでは販売方法から組織文化も違います。統合からおよそ5ヵ月ですが、うまくいっていますか。

 青栁 今回の統合は、食の改革が一番の目的です。食の改革と同時に北海道で地域に一番貢献する企業になることです。旧マックスバリュ北海道と旧イオン北海道は、同じイオングループでしたが、仲間であると同時に競争相手でもありました。そうした個別店舗ごとの点の展開から面の展開にならなければ地域へのバリューを高められません。地域貢献活動をとっても、個々の店舗が単独で頑張ってもなかなか広がらないものですが、統合・連合して行えば地域で大きな力を発揮できます。SMとGMSを所管する「エリア事業部」にしたのは、その目的もあります。
 札幌市内は、区単位をベースで4つに分けましたが、それ以外は、道南、道北、道東、函館の4つに分けて、各エリアに事業部長とSM店舗を所管するエリアマネージャーを配置して事業部長1人の配下で一斉に連携していく体制にしました。商品も共有化しないといけないので、GMS商品部、SM商品部という分け方をせず、カテゴリーごとに1人のマネージャーの下で決めていくようにしました。ボリュームを増やすことによる原価低減や物流効率を上げることもできます。

 ーー敢えて業態別の組織にしなかったと。

 青栁 この組織にするときには、社内でも心配はありました。しかし、地域のお客さまの支持をいただくためには業種・業態は関係がありません。それぞれの店舗の屋号を変えるわけでもありませんし、それぞれが展開している強いセールなどは残しながら、お客さまにアプローチする考え方で進めているので、現段階ではGMSとSMの間でハレーションが起きているとは思いません。
 事業部をエリアごとに細かく分けたことで、事業部長が見る範囲が狭くなったことと、エリアマネージャーも配置したので店舗に細かくアプローチすることができるようになり、個々の店舗の状況を見て運営していくことができています。SMの店舗では、衣料や住居余暇商品の品揃えを充実させたいと思ったとき、今までは単店だけで品揃えすると商品の導入から売り切りまで全部自分たちでやらなければならなかった。そうするとどうしても無理がきます。販売のピークタイムを過ぎた家電商品を1年持ち越すのか、それとも安値で売るのかなど、お客さまに品揃えがアピールできたとしても、店舗としては最終的に利益が残らないことも多かった。そうしたことも、事業部長の意思決定でこうした商品をGMS店舗からSM店舗に持って行くこともでき、シーズンが終わったらSM店舗からGMS店舗に戻すこともできるようになります。



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