東日本大震災で被災した人たちの避難先として道内でも受け入れの動きが出ているが、これら被災した人たちの道内での雇用先として農業がクローズアップされている。ただ、コメや畑作では雇用の場を作るのは難しく、可能性があるのは野菜生産。行政と各地の農協が支援体制を作れば地域農業の振興にもつながる。


 市町村などの首長が被災者の受け入れと地域農業振興を結びつける発想を具体化すれば早期実現は可能だ。
 東日本大震災は農業にも被害を与え、宮城県の8市6町では農地面積13万6000㌶のうちで1万5000㌶、総面積の約1割が被害を受けた。その中には津波による塩害などもあって、通常の生産に戻るには長期間が必要。
 深刻なのは福島第一原発による直接被害や風評被害。
 被災地での農業再興は不可欠だが、中には農業を諦めざるを得ない農家も出ている。
 道内ではこうした被災農家を受け入れる余地があるものの、実際問題としてコメや畑作では難しいと見られている。
 コメの減反を緩和して増産体制を取れば良いという意見もあるが、現在の稲作農家だけでも2~3倍の増産は可能というし、畑作も大規模化が進んでいる。
 そうした中で野菜の増産体制は現実的という。メロンやホウレンソウ、ミニトマト、ピーマン、キューリといった園芸野菜は作付けの自由度が大きい。
 ある農協幹部がこんな試算を明らかにする。
「10aならどんな野菜を作っても100万円くらいの売り上げにはなる。1haなら1000万円。これなら続けていけるだろう。被災者の方々も農業で自立していくことはできるだろう」
 しかし、資産もなく着の身着のままの被災者にとって、行政の支援は不可欠。公営住宅の当面の無償提供や地元農協とのタイアップで農地やハウス設置費用などの支援体制も必要になってくる。
「行政と農協が一体になってシステムづくりを急ぐべきだ。市町村の首長がその気になればできる。地域農業を振興できて雇用の場も広がるのだから、首長にとっては政策の具体化につながるのではないか」(前出・農協幹部)
 そうなれば、東日本大震災で北海道ができることが、またひとつ増える。


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