ーー今期(20年3月期)は預金も貸し出しも伸ばしていくということですか。

 前田 今期は、貸出し全体は伸びますが、地方公共団体向けの貸出残高は流動的です。地公体向けは入札で落札しなければ貸出金は減少しますし、落札すれば増えるのでケースバイケースで臨みます。地公体向け貸出しは今のところ平均残高ベースでマイナスですから、期末も平残ベースでマイナスになるかもしれません。

 ーー金利競争は以前よりは落ち着いたと思いますがいかがですか。

 前田 まだ続いていますね。札幌が本店の金融機関は金利競争をあまり仕掛けませんが、本店が本州など他地域にある金融機関は金利競争を仕掛けてくる場合が多いようです。

 ーー取引先などの資金ニーズ、資金需要の傾向はどうですか。

 前田 以前は土木建築業界が主な取引先でした。この業界は安倍政権になってから業況が非常に良い。皆さん、収益が上がっているので金融機関からの借入金は減っています。これまで一番融資量が多かった土木建設業がそういう状況なので、他も似たような状況と言えるでしょう。無借金経営を目指すと宣言して順調に借入金を減らしている企業もあります。当金庫の札幌地区のシェアは15%くらいで、後志地区のシェアは70~80%ほどありますから後志地区で融資を増やしていくのはなかなか大変です。

 ーーマイナス金利の厳しい環境下でも信金は頑張っている印象です。

 前田 当金庫の余資運用は10年物国債が中心でほぼ1年ごとに満期が来ます。満期償還で戻ってきてもマイナス金利のため、新たな運用先がなかなかありません。できるだけ短期で運用していますが、マイナス金利が解除されて少しずつ金利が上がっていく時代になっても安いストックが大量にあるので、運用益を増やしていくのは難しい環境です。貸出金も同じで、10年固定の住宅ローンや設備資金は金利上昇局面でも個別に引き上げるのはなかなか難しい。

 有価証券に関してリスクを取る運用は極力控えています。やはり融資を着実に増やしていくことを基本にしています。役務収益について言えば、投資信託の窓口はありますがあまり扱っていないのが実際です。損害保険、生命保険は扱っていますからそこからある程度の役務収益が出ています。

 ーーところで、3金庫の人事の統合、融合についてはどう考えますか。

 前田 3金庫の良いところを共有するためにも、人材交流は必要不可欠と考えています。合併後しばらくの間は、取引先が不安を感じることのないよう旧金庫間を跨ぐ職員の異動は最小限に留めていた経緯があります。今年の7月1日以降、営業店長をはじめ、3金庫間の人事交流を積極的に進めています。合併時点(18年1月1日)から現在(19年9月1日)までの人事異動における人事交流対象者は、計94人になっています。

 ーー3金庫にはそれぞれのカラーがあったと思いますが、北海道信金のカラーとしてどういうものを目指しますか。

 前田 当金庫は信金業界で言う“フェース・トゥ・フェース”の先端を走っています。取引先を訪問して話を聞くことを基本にしていますから、渉外先数は信金業界で一番多いと思います。他の金融機関と比べて渉外担当の人数は断トツに多いでしょう。取引先の方が来店した際に話を聞くのも良いですが、その時は取引先の方も背広を着ています。こちらから先方にお邪魔したら取引先の方は仕事着姿の場合が多いですね。そうすると普段の会話ができます。

 私は、訪問件数と職員の能力は比例すると思っています。同じところに何回も行くのではなく、訪問先数を増やしていくことが大事。訪問することによって相手からリクエストが来ますから、それを一つずつ消化する過程が自らの力になっていきます。1日10軒しか回らない職員と20軒、30軒回る職員がいたら1年間で会う人の数は2倍、3倍も違ってきます。
 リクエストの数が多い職員と比べて半分とか3分の1だったらその職員は成長しないでしょう。私が営業店の職員だったころは『1日36軒回れ』と言われていました。定期積み立ての集金もあったので30軒以上は回っていました。積み立ては定例的にお伺いするツールとしてずっと継承しています。企業は大きくなると定期積み金をしなくなるところも出てきますから、その場合は個別に何月何日に訪問しますと言えばいいのです。職員には『訪問件数を増やせ』とハッパを掛けています。



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