71歳で国家資格「社会福祉士」を取得――。社会福祉法人北海道社会福祉事業団理事長を務める吉田洋一さんが、合格率25%の国家試験に今年3月、見事合格した。「勉強してきたことを事業団の仕事に活かせるようにしたい」と吉田さんは話している。20180316_164511(写真は、吉田洋一さん)

 吉田さんは、道教育長を務めた元道庁職員。2009年4月から北海道社会福祉事業団理事長(道庁所管だったが、06年民間運営に移行)に就任、障がい者福祉の向上を目指す法人の理事長として運営に采配を振るってきた。その吉田さんは、70歳を前にして社会福祉士の資格取得に挑戦することにした。「年齢的に節目だったことに加え、福祉の仕事をもう少し勉強したいと思ったから」と淡々と語る。

 社会福祉士は、合格率が25%前後の難関試験。おまけに受験資格を得なければ国家試験を受験することもできない。吉田さんが具体的に行動を始めたのは、16年5月から。福祉系専門学校の通信制に入学、受験に必要な単位取得に向けて勉強をスタートさせた。また、180時間の実務経験を得るために、事業団が運営する障がい者施設で一般職員とともに活動を始めた。

 通信制とはいえ、9科目のテキストで勉強しつつレポートを提出して毎回合格点を取らなければならない。「この年齢になると一度ではなかなか覚えられなかった。でも毎日積み重ねていくうちに徐々に理解できるようになりました」と吉田さん。実務経験では、現場で働く職員たちの生の声を聞く機会にも恵まれた。

 そして今年に入って学科と実務の両面で受験資格を得ることができた。実務経験の最終日には、職員たちが寄せ書きした色紙を手渡され、吉田さんも胸が熱くなったという。

 国家試験に臨んだのは2月4日。20~30代の受験生に交じって吉田さんの姿があった。試験後の自己採点では150問中6割には自信をもって回答できたが、残り4割は不安だった。合格にはちょうど6割の正解が必要。ぎりぎりのボーダーライン、どっちに転ぶかわからない――吉田さんはまるで塀の上を歩くような心境だったという。

 そして3月15日の合格発表。自分の番号を見つけた時、「嬉しいというよりもほっとしたという気持ちの方が強かった。平昌五輪でほら、銅メダリストが『ほっとした』と言っていたでしょ。あの気持ちがよくわかりました」と吉田さん。

 事業団の理事長として不合格になる訳にはいかなかった。職員はみんなが吉田さんの挑戦を知っている。事実上、ワンチャンスしかないという心理的な負担がある中での受験だった。それだけに『ほっとした』という言葉には実感がこもっているようだ。

 吉田さんがこうした試験に臨んだのは、45年ほど前の自治省採用試験以来。「目標を持つことの大切をあらためて感じた」(吉田さん)
 吉田さんの仕事が、社会福祉士の資格によって大きく変わることはない。ただ、今後の事業活動で吉田さんなりの気づきや新たな発見が出てくるだろう。学ぶことに年齢は関係ない――吉田さんの背中が語りかけた。


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