札幌市の秋元克広市長(60)が、全国的に注目を集める衆院選北海道5区補欠選挙で政治的決断を下した。自・公・新党大地と民・共・維新の党が激突する決戦と距離を置き、両陣営の支援・応援はしないことを決めたからだ。政治的行動をしないと決めた政治的決断だが、市長在任中には参院選や衆院選も控える。ぶれずに中立を保てるのか。IMG_0070(写真は、秋元市長)

 秋元市長は、昨年4月の市長選で民主党などの推薦を受けて当選した。上田文雄前市長(67)の後継候補として民主・連合などが組織を動かした。しかし、選対の中軸になったのは札幌JC(青年会議所)経験のある市内の経済人たちだった。 
 その経済人たちの多くは自民支持者で、秋元氏も当初は自民候補として出馬する予定だったが、故町村信孝衆議らが上田市政の下で副市長だった秋元氏には自民推薦の資格はないとして却下。自民は元総務省官僚の本間奈々氏で2度目の挑戦。経済界は、真っ二つに分かれたが、結果は秋元氏が約14万票差で勝利した。
 
 秋元市政の誕生には、こうしたねじれ構造があった。当選後、自民の行動は素早かった。伊達忠一参議らが安倍首相とのパイプを生かして秋元氏を面会させ、『秋元さんはもともと自民候補』と言わせるなど取り込みに腐心。秋元市長は、民主党などの支援を受けたものの、持論は『地方自治に政党色はいらない』。それゆえ選挙中も市民党という立場を貫き通した。安倍首相と面会したからと言って自民寄りになることもなく、文字通り不偏不党を堅持している。
 
 秋元市長の最初の政治的試練は、早くから5区補選と見られていた。自・公・新党大地が推す和田義明氏(44)と民・共・維新の党など野党共闘候補の池田真紀氏(43)の激突。自民は宮崎謙介後遺症を吹っ切り、参議選あるいはダブル選に繋げたい。民主にとっても野党共闘効果の試金石となる。まして3月末の民進党結党後に臨む初の国政選挙。
 
 5区には札幌市厚別区が含まれ、過去の選挙を見ても厚別区の勝敗が趨勢を決める。絶対勝たなければならない両陣営に秋元市長は早々と中立を決めた。野党共闘の立役者の1人でもある上田前市長と亀裂が入りかねない決断だが、上田氏は秋元氏をこの流れに引き込もうとしていない。「上田氏に見識あり」という評価も出ている。
 
 秋元市長が応援したから票が上積みされるかどうかは分からないにしても、政党にとっては市長との距離を縮める機会になる。中立の立場は秋元市長にとって最良の選択といえそうだが、政党にとっては苦々しく映るだろう。国政選挙は市長在任中に少なくとも2度はある。秋元市政が2期、3期と続けば、こうした政治的決断は何度も何度も繰り返し訪れる。ぶれずに初志貫徹できるか、秋元市長が試されることになる。


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