来年3月12日に開通する札幌駅前通地下歩行空間で、札幌駅前と大通間の回遊性が高まり、薄暮化している大通商業ゾーンの賑わいが復活すると期待されている。しかし、迎える大通ゾーンには新たな投資案件がなく消費者を引き付ける魅力度には乏しい。新たな商業施設の登場が待たれる。


札幌駅前にJRタワーが出来て7年、大丸やステラプレイス、ビッグカメラなど商業集積は大通ゾーンと比較にならないほど厚みを増した。
JRタワーが出現する以前は、駅前VS.大通の流通戦争は大通が優位に展開していたが、7年の間で逆転、その差は年を重ねるごとに広がっている。
大通の核になっていた丸井今井が経営破綻、三越も元気さが失われ、「若者が集まる駅前、高齢者が集まる大通」と言われるように新たな消費文化が生まれそうな予感は、大通ゾーンには殆ど無くなってしまった。
大通公園という癒しのインフラを備え、地場の商業者が多い土着性があって本来なら札幌の歴史と文化を匂わせる商業ゾーンとしてのポテンシャルを最大限発揮できる環境にあるにもかかわらず、文字通り現在の北海道
が置かれている閉塞感を凝縮したように、大通ゾーンの商業者たちは縮こまっているように見える。
「今こそ、大通ゾーンの商業者は100年の大計を考えて投資をすべきだ」と言うのは、地場オフィスビルの社長。
その社長は、私見として次のような構想を語る。
「私は、大通に百貨店2つは無理だと思う。丸井今井も三越も三越伊勢丹ホールディングスの子会社として統合されたのだから、ここは大胆な発想で三越をスクラップ&ビルドして大規模化、1館体制で新しくするべきだ。丸井今井を売却してその資金を捻出するのが大通復活の100年の大計ではないか」
丸井今井の売却先として、その社長はヨドバシカメラを上げる。
「現在、ヨドバシカメラが取得意欲を見せているのは駅前にある閉鎖された札幌西武とロフト札幌の土地建物。しかし、あの場所は既に再開発計画があるし、駐車場問題もネックになっているから取得は難しい。その点、丸井今井の札幌店と一条館は駐車場問題も解消できるし大通ゾーンに家電量販店が出現すれば、新たな集客にも結びつく」
駅前に引き離された大通ゾーンの商業施設は、最早リニューアル程度では消費者を引き寄せられない。抜本的に建て替えをして洗練された施設ができない限り消費者は戻ってこないだろう。
駅前通地下歩行空間が開通すれば、大通に消費者が回遊してくるよりもさらに駅前ゾーンの磁力が増し、大通から消費者が流れていく可能性の方が高い。都市の狭い範囲でもストロー現象は十分に起こりうるだろう。
(写真は、札幌丸井今井の店舗)

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