48歳で理事長に就任してから今年で9年目になるコープさっぽろの大見英明理事長(56)。経営危機に見舞われた1998年以降、日本生活協同組合連合会から派遣された内舘晟(うちだて・あきら)、松村喬(まつむら・たかし)の2理事長に仕え、「おいしいお店」づくりでコープさっぽろを食品ス―パーとして甦らせたのは大見氏の働きが大きかった。しかし、コープさっぽろは今、前向きで明るい性格(たち)の大見氏でさえショックを隠せないほどの業績降下に見舞われている。競争激化の外部要因によるものだが、外部環境に合わせた体制作りが遅れていることも否定できない。大見氏の胸の内を聞いた。IMG_2613(写真は、大見英明理事長)
 
 ――昨年12月の歳末商戦を振り返ると…。
 
 大見 正直、厳しかった。消費全体が落ちているが、僕はどう考えても北電の値上げが大きく影響していると思っている。例年、北海道は秋に向かって寒くなる時期に節約志向が出てくる。秋口にギューと財布が締まる時に北電の値上げや公共交通値上げなどが重なり節約志向に一段と弾みがかかった。
 
 ――98年から「おいしいお店」づくりを目指して店舗リニューアルを続け、これまで一度の減収もなかったと記憶する。
 
 大見 「ビッグハウス」(ラルズが展開するSM=食品スーパー)の2倍のSKU(在庫保管単位)を揃えて品質重視でずっと頑張ってきた。日本生協連の支援もあって大きな投資も行って店舗をリニューアルしてきた。経営危機後の1999年2009年まで既存店前年比が11年連続で上がった。
 当時、我々が何をしてきたか。スーパーとしてきちんともう一回北海道でポジションを取ろうということが原動力だった。生鮮食品を含めた品揃えを増やして地域一番のスーパーになろうと始めた。その後、02年から05年くらいまで、酒とドラッグとコメを中心に店舗開発を進める取り組みを続け売上げが伸びた。酒は北酒販と連携して強化、07年までずっと伸び続けて、02年に53億だった酒の売上げが直近では200億円まで増えた。  
 
 さらにワンスットショッピングとしてスーパーとドラッグのコンビネーション業態を中心に展開、09年くらいまで伸びた。その過程で07年からは“売りの壁”をどう突破するかに力を入れ日曜日に販促を強化、例えば今まで5億円しか売っていなかった店舗で10億円に挑戦、それを次々に実現させていった。
 
 ――SMの競争力は付いたということか。
 
 大見 売りの壁をどう突破するかというころに11年の東日本大震災が発生、それ以降、コンビニエンスストアとドラッグストアが矢継ぎ早に出店強化した。コンビニがミニSM化し、ドラッグが食品マーケットを積極的に取りに行く現象が起きた。取りに来るからには低価格で来る。
 
 ――そういう状況を経て昨年に繋がって行く訳だが状況はどうだったのか。
 
 大見 14年になって4月に消費税が8%になったが上期(4~9月)まで売上げは対前年比100%を超え、利益も前年と同じくらいだった。それが10月から一気に壊れた。主たる要因は前述したように消費マインドが節約志向に入ったことに連れて北電と地下鉄・バスの値上げが重なったこと、さらにこのタイミングに合わせてトライアルがディスカウント(DS)の新店7店を出したことがかなり大きく影響している。
 
 ――トライアルのDSはそれほど影響が大きかったのか。
 
 大見 高をくくっていた面があった。従来の旧店居抜きという古いトライアル店舗をイメージしていたが、全くの新店でコープのセール価格を全部下回る定番価格はグローサリーの世界で考えられなかった。単品の価格差が普通の食品で30円から40円ついたら競争力はなくなってしまう。10月からは価格乱戦が始まり、完璧にデフレスパイラル状態だ。NB商品のディスカウント価格が出ると、お客の買い物行動に変化が出てワンストップショッピングが厳しくなる。売上げが10月から前年比で実質97%になった。
 
 ――理事長に就任して以来かつて経験のない状況ということか。今期(2015年3月期)は減収か。
 
 大見 耐えなければいけない時期に来たと思う。宅配トドックが前年比で103~104%伸びても店舗事業が97%では減収減益になるだろう。98年から減収は初めのことだ。
 
 ――3月21日以降の来期からどう対応するのか。
 
 大見 生き延びるためにどうするかということだ。NB価格が下がってしまった中でグローサリー系は価格対応をせざるを得ない。放置していたらもっとおかしくなる。価格対応するとともに生鮮三品プラス惣菜の分野で、引き続き商品力と営業力を上げてくかに力を結集する。
 
 ――取引先の親睦団体、生協会の新年学習会では現場の営業力、売る力を再構築すると言ったが、具体的にどうするのか。
 
 大見 今まではコープさっぽろは品揃え型でやってきた。単品をどう売って行くかというメリハリが効いていたかというとそうでも部分があった。例えば食品系はエンド本数が5本とか6本あるとすればそれを少なくして単品訴求型のエンドプロモーションに切り替えることをやって行く。要は現場の作業を若干減らしながらでも一定の値ごろ感が出る商品設定と売り方を強めるということだ。
 
 ――SKUの見直しがあるということか。
 
 大見 部分見直しはある。1年間52週のMD(マーチャンダイジング)をやりながら「おいしいお店」を目指してきたが、本当に「おいしいお店」として進化しているのかも見直す。他のSMとの差異性を出すため消費者に役に立つ情報や売り方など店頭POPも工夫する。
 
 ――例えばお手本とするSMはあるのか。
 
 大見 道内にはないが、道外にはある。ローカルスーパーで善戦しているところがある。価値表現ができていないコープの店舗は、そつなくしゃれているが、泥臭さがない。それではこだわり感が伝わらない。これをもう一回壊す。もっともっと顧客に分かるようにする。売上げが前年比97%で3%の支持を失ったのはロイヤリティの不足だった。店舗に対する顧客支持率が足りないから他に取られたということだ。
 
 ――店舗での価値表現の見直しは新年度から始めるのか。
 
 大見 早ければ2月下旬から徐々にやっていきたい。札幌市内の店舗から順次始めて全道に広げる。(以下、インタビューは次回に続く)


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