北海道は農業を中心に据えて持続可能な経済成長を確立していくことが求められるが、農業をITと組み合わせたちょっと変わったアイデアが構想されている。バーチャルな世界と実際の農業をつなぎ合わせて農業を身近に感じてもらおうというものだ。


 ユニークな取り組みで農業を活性化させようとしているのは、日本IBM。同社は、環境やエネルギー、食の安全など地球規模の課題をITの活用で解決し、地球を賢く、スマートにしていく「Smarter Planet」(スマーター・プラネット)というコーポレートビジョンを提唱しており、その一環として農業の活性化にも取り組んでいる。
 現在、同社で検討されているのは、実世界とは違うアプローチで農業を身近に感じてもらう方法。同社の執行役員で開発製造担当の久世和資さんによると、「バーチャルな世界で北海道の土地を買って野菜を育てましょうと希望者を募り、パーチャルな中で野菜を育てるもの。仮想の世界で肥料をまいたり、農薬を使ったり使わなかったりして手をかけて野菜を育ていくのです。手を抜いた人と手を抜かなかった人とでは、野菜の出来栄えに差が出てきます。収穫時期になって手を抜いた人には、実際に天候不順などで捨てられていた野菜が送られてくるようなプログラムをイメージしています。つまり、実世界の農業とバーチャル世界の農業を組み合わせて農業への関心を高める取り組みです」と言う。
 かつて流行ったタマゴッチのようなゲーム感覚で若者や都会に住む人たちに農業の大切さや苦労を感じてもらおうというものだ。
 このアプローチは、バーチャル世界と言いながら、実際の天候や土の温度、水の温度など農作業環境を忠実に再現していくことを目指しており、ゲーム感覚の遊びというよりも、実際に農業を手がける前のシミュレーション、トレーニングの役割が大きいようだ。
 定年帰農とかセカンドライフに農業を選ぶ人もおり、日本IBMによるこの取り組みが現実化されれば、食の確保や自給率向上に大きな効果が出てくるかもしれない。


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