札幌市内で行われた道内7空港の一括民営化に向けた「空港運営戦略フォーラム」(9月9日開催)について本サイトはこれまで5回に亘って詳報してきた。今回は、フォーラムの最後に行われた空港立地自治体の首長を交えたパネルディスカッションについて紹介する。IMG_7763 (2)(写真は、第2部のパネルディスカッション)

 パネルディスカッションのテーマは、「コンセッションをどう地域活性化につなげるか」。パネラーは、稚内市長・工藤広氏、釧路市長・蝦名大也氏、大空町長・山下英二氏、函館市副市長・片岡格氏、ピーチアビエーション副社長・森健明氏、北海道経済連合会専務理事・瀬尾英生氏、前釧路公立大学学長・小磯修二氏の7人で、進行は今回も内閣府大臣補佐官の福田隆之氏が務めた。

 ――空港を利用する航空会社としてコンセッションの取り組みはどう見えているか。また従来とどう変わったか?

 森副社長 関西国際空港については長い間、NKIAC(新関西国際空港)が運営してきて我々にターミナルを作ってくれたのは同社で、その後のターミナル拡張工事を決めてくれたのも同社だった。いよいよ運用が始まる時に、関西エアポートという新しい経営体制に変わった。この時から交渉相手が変わり、多くの経験をもった大勢の外国人を相手に交渉しなければならなくなった。

 もともと空港会社と航空会社の関係は世界的に見ても蜜月ではない。常に対立の関係にあって互いに良いものを取って行くのが常識だ。当然、関西エアポートの経営陣と我々が手をつないで仲良くという訳にはいかない。関西エアポートのスペシャリストと我々のスペシャリストが丁々発止のやりとりをすることが多くなった。

 実は、そういう真剣なやり取りは今までNKIACとの間ではなかった。関西エアポートに変わってからの気づきは、我々が良いと思っていたことも実は違う観点から見るともっと別な方法があるということ。実際、関西エアポートからそういう提案を非常に多く受けた。

 ターミナル通路の拡張部分の供用開始が迫っていたため、我々はスケジュールありきで動いていた。そんな中、関西エアポート経営陣から「本来こうあるべき」という提案をもらった。例えばセキュリティ面やウォークスルー型の免税店がそれだ。とりわけウォークスルー型免税店は、出国審査を受けると必ず通らないといけない構造で、我々からすると邪魔な存在。ただでさえ時間がないのにそれによって搭乗がさらに遅れてしまうと考えたからだ。しかし、この免税店スタイルによって客単価は60%もアップしたという。我々には信じられないことだが、そういうことが起きている。多分その売り上げ効果は、我々にも良い形でリターンがあるだろう。

 こういうことが、これからもたくさん出てくると思う。新たな気付きと次に向けた発展的な考えができるようになったのは大きな変化だ。

 LCCは4時間の飛行が限度でロングホール(長距離線)の国際線は飛ばせない。利用客を増やすためには欧米、東南アジア、オーストラリアからどんどん日本に来てもらい、ショートホール(短距離線)のLCCに乗り継いでもらうマーケティングが必要。関西エアポートの株主であるヴァンシ・エアポートの持つグローバルなネットワークと知見が生きてくると思う。関空がこれからやっていかなければならないテーマに沿ったコンセッション運営が期待できるだろう。

 仙台エアポートについては、9月から札幌と台北の路線を開設するが、我々は仙台での大規模な展開は考えていなかった。民営化されて東急グループを中心とする新しい経営体制になり、その提案書を読むと「東北」というキーワードが頻繁に出てきた。

 ピーチは機材も多くないので、東北にある多くの空港に就航することはできない。仙台に就航すれば、東北全体に誘客できるという提案を仙台エアポートから受けた。東急の持つノウハウを生かした2次交通の利便性向上も我々にとって魅力的だった。

 空港単位で見ると、180の客席を毎日85%以上埋めるのは難しいが、東北全体と考えると比較的容易だ。仙台が飽和状態になると東北の他の空港への就航も可能性として出てくる。関空と仙台は空港ごとに強みと弱みがある。強みをさらに発展させ、弱みをしっかり補っていくことに適した事業者が選ばれている。LCCをはじめとする各航空会社にとっても大きな転機になるだろう。



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