4月の小樽市長選で当選した中松義治氏の政治資金集めパーティ券を、市の総務部長ら幹部13人が市役所内で130枚を売りさばいた事件は、時が止まった旧態依然の小樽市行政を炙り出した。市幹部は逮捕され、30万円の罰金と4~5年の公民権停止の刑事処分を受けたが、公民権停止の幹部が市政を司る異常な事態が続く。  
小樽行政に蔓延る無自覚な構造的癒着にようやく市民たちが声を上げ始めた。2日、小樽市の経済センターで行われた「クリーンな小樽市役所を考えるフォーラム」には、この問題を機に市民はどう行動すべきかが話し合われた。参加した約300人はかつて運河保存を勝ち取った市民運動のように、地道で持続的に市政改革を自ら進めていくことを確認しあっていた。(写真は、フォーラムで問題提起した4人のパネラー。左から福田氏、神谷氏、中井氏、河合氏)

 
 フォーラムを主催した世話人の医師、中井秀紀氏は、「13万都市の小樽の旧態依然とした体質を未だに持ち続けていることが今回の事件で発覚し、全国から笑いものにされている。我々市民も馬鹿にされているようで恥ずかしいというのが率直な感想。公務員は、市民全体のために働くから税金で給料が支払われているので倫理観、法令順守は基本中の基本。そういう市役所を作るためにはどうしたら良いか、構造的背景を解き明かして再発防止を共に作っていくために、市民も主人公になって発言していくことが必要だ」と息の長い持続的な運動を訴えかけた。
 
 パネルディスカッションでは、中井氏のほか札幌学院大神谷章生教授や札幌市議会、道議会の政務調査費の使途などについて市民目線のオンブズマン活動をしている弁護士の福田亘洋氏、酪農学園大の河合博司教授が討論。
 
 神谷氏は、「公民権停止の職員が行政を司る不可思議さは理解できない。市役所にも30~40代の若い世代はいるはず。職務を移行して行政再生を図るべき」と強調、福田氏も「このフォーラムに参加している皆さんが、本気で市政の威信回復をしたいのなら直接市長に要請文を出すことや議会に働きかけて市長の不信任を出す行動を起こすべきだ。リコールは選挙後1年間はできないが、そういう運動で始めて民意が反映されたと言えるのではないか。いずれにしても、議会に市民は嘗められていると感じる」と強い調子で問いかけた。
 
 河合氏は、「時代は大きく変わっているのに小樽の行政はその流れに取り残されていた。税金の使い方や、政治や行政のあり方は国民、市民の目線と真剣に向き合っている中で小樽市民も恥ずかしいという自覚を持つべき。恥ずかしいことを克服するために全国の市町村の経験から学ぶことが大切。ピンチはチャンスなのだから小樽を全国に発信して様々な地域とのキャッチボールをしていくことが求められる」と総括した。
 
 小樽はかつて運河の保存で全国的に注目され、その運動で実った一部運河の保存が“観光の小樽”を体現する源になった。運河保存の運動は小さな動きだったが、持続的に長期間続けたことで大きなうねりにつながった。
 
 こうした小さな運動が大きな成果に結びついた最近の例として、市立病院の移転問題がある。小樽ベイシティへの移転を市長はじめ行政が強力に押し進める中で、反対運動が広がりを見せて現在地での新築が決まった。
 
 中井氏は、「運河を潰せと言った政党や団体、ベイシティへの市立病院移転を進めた人たちは、それが撤回されても何ら反省がなかった。今回のパーティ券事件もそれでは困る。構造的、習慣化している行政の体質を根本から治すために息の長い運動を少人数からでもやっていきたい」と決意していた。
 参加者との討論では、6人が発言するなど、活発な意見交換が行われた。


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