ボウリング好きの幅広い年代が集っていた深川市音江町字豊泉3の「清水物産セントラルボウル」が、10月31日に営業を終了した。深川温泉観光ホテル併設のボウリング場開設から数えて58年目、コロナ禍の影響が響き、存続を断念した。※動画はこちらの画像↓をクリックしてご覧ください。

(写真は、10月31日に営業を終えたセントラルボウル)
(写真は、開設当初から使われている木のレーンを楽しむ利用客)

 「まるで廃墟のようだ」と誰もが口にするのが、国道12号線沿いにある深川温泉観光ホテル。朽ちかけたコンクリートに壊れた窓ガラス、崩れ落ちそうな看板。1964年に開業したこのホテルは、40年ほど前に資金繰り難で社長が失踪、営業を停止。以降、荒れるがままに放置されている。このホテルと同時にオープンしたのが、併設されたセントラルボウル。ホテルと同時期に建てられた施設だけに、外観はやはり廃墟のように見えるが、れっきとした現役のボウリング場だった。

 「初めての方は、外観を見て驚かれます。中に入ってきれいなレーンがあって営業していることを知って、また驚かれます」とセントラルボウル運営責任者の駒村稔さん(55)。駒村さんとこのボウリング場との付き合いは長い。地元生まれの駒村さんが、高校生の時にアルバイトをしていたのが、このボウリング場。卒業後に別のボウリング場などで働いていたが、1983年に札幌の八旺社が運営を継承して以降、再びこの場所で働くことになって30年以上が経過している。


(写真は、セントラルボウルの入り口)

 八旺社は、2018年に北海道清水物産(深川市)にボウリング場を売却する。同社は中国系の清水物産(本社・千葉市美浜区)の現地子会社。北海道清水物産が運営することになっても、駒村さんは現場責任者を務めてきた。

 開設以来という木のレーンは、今も輝くほど手入れされている。現在、主流のプラスチックレーンと違い、ボールの重量が木の響きとなって跳ね返ってくる。ピンが倒れる音も、どことなく温かい音色となってこだまする。木のレーンは道内ではここを含めて3ヵ所しかない。

 営業終了日の前日に訪れると、全16レーンは利用客でほぼ埋まっていた。「コロナ前までも利用客は減少傾向にありましたが、経営的には継続できる状況でした。しかし、コロナ禍が始まって利用客が4割減少、赤字に陥りました。最近になって、徐々に客足が戻っていましたが、燃料費など諸経費が高騰しており、運営継続は難しいと会社が判断、終了することになりました」と駒村さん。

 セントラルボウルの営業時間は、平日と日祝が17時から翌朝の2時迄、土曜日は14時から翌朝3時まで。砂川や旭川のボウリング場は22時頃には閉まるため、別のボウリング場で楽しんでから、こちらに来るお客も多かったという。夜になると、屋外の巨大なピンが輝き、不思議な雰囲気を醸し出していた。

 常連が多いこのボウリング場には、客同士の温かい交流があった。ボウリングを始めて1年という滝川市に住む26歳の男性は、「ボウリングのやり方を駒村さんから教わり、マイボールとマイシューズを入れるバッグは、常連の方からもらいました。皆さん、とても親切で週1回は必ず来ていました。なくなるのはとても寂しい」と話した。

 営業終了が決まってから、利用客からは、「お客は増えているのに、なぜやめるのか」、「ここがなくなったらどこに行けばいいのか」など存続を求める声が多かった。駒村さんは、「本音を言えば続けたいですよ。でも、会社の判断には従わざるを得ません。営業終了は、寂しさを通り越して切なさそのものです」と目を伏せた。地元深川以外からも多くのボウリング愛好家を集めてきたセントラルボウルが、灯を消した。
(写真は、夜間に輝く巨大なピン)
(写真は、ファンタジックタイムのボウリング場)
 


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