――価格と品質の整合性をどうとっていますか。
大江 北海道で約200あまりの店舗を展開しているサツドラがPBを作るのは、正直ハードルが高い。大手コンビニや流通大手の真似をしてPBを作っても敵いません。原料調達の価格優位性、大量生産によるコストダウンも期待できません。一方で、価格訴求だけの商品では、体力勝負になって太刀打ちできない。そこで、同じ土俵で競争するのではなく、北海道ならではの価値を生かしたPB開発を目指そうということにしました。
ポイントは「物流費」と「フードマイレージ」です。以前の職場で痛感していたのは、全国展開するチェーンでは、製造能力や製法の制約から「本当に作りたい商品」が作れないというジレンマがあることでした。また、近年の物流費高騰により、原価の約13%を物流費が占めるようになっています。私たちは「北海道の素材」を使い、「北海道の工場」で作って、「北海道の店舗」で売る。このサイクルによって物流コストを徹底的に圧縮しました。規模の経済で敵わない部分を、輸送距離を短縮することでカバーする。この「北海道完結型」のモデルこそが、私たちの勝機になると考えたのです。
品質面では、松・竹・梅の「梅(低価格)」ではなく「竹(中価格)」以上の品質を目指しています。一方で、価格は「梅」と「竹」の中間を狙う設計にしました。お客さまに「このおいしさで、この価格で買えるのか!」という驚きを感じていただく。この心理的なバリュー設計こそが、サツドラPBの価値を高め、お客さまの支持に繋がると確信しています。
――最初に、牛乳を手掛けた理由は。
大江 ドラッグストア特有の課題である「客数の少なさ」をどう克服するか、という点です。ドラッグストアで売れる商品は、トイレットペーパーやティッシュなどのストック商品が中心であるため、スーパーマーケットなどに比べると、来店頻度が低くなる傾向があります。
客数を増やすためには、日常的に購入される商品でお客さまに選ばれる「買い場(お客さま目線の品揃え)」を作ることが不可欠です。そこで注目したのが、牛乳や食パンといった「朝食」に結び付く商品でした。昼食や夕食と違い、朝食は、多くの人にとって毎日のルーティンであり、一度「これ」と決めたら習慣化されやすい。この安定した需要を狙い、まず牛乳から着手しました。
しかし、牛乳は、スーパーなどでは激しい価格競争の対象(目玉商品)になりやすい中で、どう差別化を図るか、単にPBの牛乳を並べるだけでは、お客さまの相場観による「価格の比較」だけで判断されてしまいます。そこへ真っ向から飛び込むのは厳しい。そこで、お客さまを店頭で立ち止まらせ、「おや?」と考えさせる心理的マーケティングを取り入れました。それが『冬の牛乳』というネーミングです。
見た瞬間に「冬の牛乳って何だろう?」と興味を抱いてもらう仕掛けです。また、ネーミングだけでなく、中身(商品)にもこだわりました。実は、牛乳は季節によって成分が変わります。冬場は、乳脂肪分が高くなって濃厚になり、夏場は、放牧で牧草を食べさせるため水分が多く、サッパリした風味になります。この事実は、意外と知られていません。
私たちは冬場に脂肪分が高まっておいしくなるという特性を逆手に取り、「季節限定の希少価値」として打ち出しました。品質にこだわりつつも、価格は、市場相場から大きく外れない設定(税込み245円、公式アプリ限定価格235円)にしました。「この品質で、この価格なら」という納得感と、季節限定という特別感。これらを掛け合わせることで、価格競争に巻き込まることなくお客さまを惹きつける、サツドラ独自の価値をつくることができたと考えています。
『冬の牛乳』『春の牛乳』に続いて、『夏の牛乳』が発売されます。『夏の牛乳』は、牛乳のパッケージらしくないデザインにして、夏をイメージさせる「ひまわりの黄色」にしました。黄色だと売り場でも映えるし、家の冷蔵庫に入れてもかわいくて、心理的に訴える効果を期待しました。PBの牛乳は、1日3000本~4000本が安定的に売れています。特売などを行わず、昨年12月上旬の発売から今年5月上旬までの5ヵ月間で48万本を販売しました。


































