アークス(本社・札幌市中央区)グループの道北アークス(同・旭川市)は、買い物困難地域に向けて小型食品スーパー「ダ・マルシェ」の出店を増やしている。今年度は既に2店舗を出店、さらに自治体や地元住民の要請を受けて出店を検討中だ。同社の六車亮社長(69)に、最近の消費傾向や「ダ・マルシェ」のビジネスモデル、さらに地方スーパー生き残りの戦略などを聞いた。〈むぐるま・あきら〉1953年10月生まれ。1981年2月ふじ入社、1987年12月ふじ取締役、1991年7月ふじ常務、1998年7月ふじ代表取締役社長就任。2004年10月アークスグループ入りし、アークス取締役執行役員兼務。2012年7月ふじと道北ラルズが合併し道北アークスが誕生、代表取締役社長に就任。2022年5月にアークス取締役を退任したが、2023年5月に再度取締役に就任。
――消費傾向の変化はありますか。
六車 買い上げ点数が減っています。当社のデータによると、一品単価は前年同期比105%から106%、買い上げ点数は98%後半から99%。売上高は差し引きで、103%から104%になっています。売り上げは、今年の初めは良くなかったですが、賃上げの影響もあって持ち直してきました。3月はもの入りの季節なので、その関係もあると思う。当社の場合、前期はコロナ療養者セットの売り上げが大きかった。それを入れても、前年をぎりぎりクリアしているので、単価上昇の影響が大きい。その分、先ほど言ったように買い上げ点数が減っています。これは、スーパー業界に共通の現象でしょう。
――物価高の影響で買い物の頻度が減り、客数は減る傾向ですね。
六車 買い上げ点数ほど客数は減ってない。物価高の中、お客さまのブランドスイッチも進んでいる。NB(ナショナルブランド)商品からCGCなどPB(プライベートブランド)商品に切り替える傾向が強まっています。お客さまは、NBとPBの差をあまり感じなくなってきた。物価高によって、PBの見直しがより進んでいます。
――物価高は、まだ続きますか。
六車 まだ続くでしょう。昨年の値上げは、各メーカーともに原料高を吸収するために実施しました。今年からの値上げは、当然、原料高とか為替の影響もありますが、それにプラスして先行きのことを考えた値上げだと思います。「原料が上がったから、値上げします」ということなら、先行き、3回も4回もやらないといけなくなる。それをある程度見越して、値上げをしているのではないか。昨年は後ろ向きの値上げでしたが、今年からは前向きの値上げと言える。昇給やベースアップによる人件費上昇も影響しています。今後の人件費上昇を見越して、商品値上げに踏み切っているメーカーもあることでしょう。値上げの品目は、昨年よりも間違いなく多くなるはずです。
――お客は、ある程度値上げを受け入れているのでは。
六車 受け入れざるを得ない。消費税と同じです。ブランドスイッチをしたり、容量の小さいものを買ったりして、商品の値上げ率よりも客単価の上昇は、やや抑えられた動きになっています。
――旭川など、道北アークスが地盤とする地域での競争関係は変化していますか。
六車 今年は、新規出店もなく落ち着いています。昨年は、イオン北海道さんが「ザ・ビック」を新規出店しましたが、旭川全域に影響を及ぼすような出店ではなかった。いわば局地戦にとどまっています。
――旭川は、北海道で一番価格競争が激しい地域と言われていますが、さらに拍車がかかっていますか。
六車 価格競争が激しいというよりも、もともと価格が低い地域。今になって、激しくなったわけではない。そうしたこともあって、当社の場合、アークスグループの中では粗利が低い方です。
――今期業績の見通しは。
六車 前期は経常利益段階でも増益となりましたが、今期は見通せない。電気代や人件費など、コストを吸収するには粗利を上げるしかない。特にデリカに注力してきました。デリカの構成比を上げることと、テナントで入っていたパン店を直営化するなどして、粗利の構造を変える努力をしてきました。粗利を上げるには、値段を上げれば簡単ですが、そんなことをしたらお客さまが離れてしまう。そうした安易なやり方ではなく、カテゴリーの構成比を変えていくことで、対応を続けてきました。
それが、昨年で一段落しました。これからは、稼ぎ頭である大型店の品揃えを充実させます。インフレで単価が上がっている中、お客さまの買い上げ点数をどう上げていくか。そのためには、品揃えを変えていかなければならない。買い上げ点数の増加は、ある意味で品揃えに比例しますから。