秋も終わりに近づき食卓に並ぶ料理も冬の装いに変化しつつあるが、この季節の定番と言えば「おでん」。コンビニ各社のレジ横にはどこも「おでん」の鉄板鍋が並ぶ。しかし、「セイコーマート」には「おでん」がない。なぜ扱っていないのか、セイコーマートを展開するセコマ(本社・札幌市中央区)の丸谷智保社長(65)は「セコマの矜持だ」と胸を張る。(写真は、セコマの丸谷智保社長)

 セコマはこの20年間、コンビニメジャー軍団とは違う成長をしてきた。それは製販一体、北海道の鮭を例えに“遡上戦略”とも言える一気通貫の経営モデル構築だった。セコマのルーツは地場卸で、個人商店向けに商品供給する中で「セブンーイレブン」よりも早くコンビニ展開に目を付けた。

 セコマ中興の祖とも言えるのが故・赤尾昭彦氏。赤尾氏はセブンの怖さを知っていたからこそ早くから差別化を図ってきた。卸から製造、物流、さらに食材そのものの生産も手掛けた。店内調理もいち早く取り入れ、現在の「セイコーマート」の基礎を20年前に構築している。

 10年前に社長に就任した丸谷氏はこの路線を強く太くすることを徹底した。直感で未来を描いた赤尾氏、存在意義を見える化し、地域を意識した経営を根幹に据えた丸谷氏。2人のトップが築き上げてきたのが「他の真似はしない」という組織風土だった。

 特徴のある商品、他にはない商品を持つことは、選ばれる店に繋がる。事実、顧客満足度調査1位の原動力はこうした特徴的商品を多数持っていることが理由だ。セイコーマートに来店する1000人当たりの上位購入10品目はすべてセコマのオリジナルブランド商品だという。“おでんをやらない”ことがセコマの存在意義を端的に示しているのだ。


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