ーーコロナ禍で産業の国内回帰も想定されていますが、その場合、北海道の優位性はありますか。

 横内 一時期、コールセンターが多く札幌を中心に進出してきました。あの時は優秀な女性が確保しやすかったという労働マーケットがあったからですが、今は女性も道外に出て行くなど労働マーケットが大きく変わりました。北海道に企業が進出してきて生産性が上がって発展に繋がっていくことは、よほどの幸運に恵まれないと難しいでしょう。
 なにより自力で発展の芽を作って育てていかなければ、持続的に成長することは難しい。JR北海道の路線存続問題で、関係する地方公共団体は、『JRの努力で何とかしろ』というばかり。物足りなく思うのは、地元として路線を残すために協力できることは何か、オール北海道で支えるために道庁を中心としてどんな政策ができるのかという議論が広がらないことです。そうした議論を経た上で最後に国にお願いするのが順番だと思います。でも今は、順番が逆。コロナ問題がJRの旅客数に響き、回復が長引くと、今までよりもさらに厳しい経営状態になります。民間企業は赤字を垂れ流しては続けられません。公共インフラだから財政支援がある程度は出てきますが、それは国民の税金です。コロナの後、財政がどうなるか分からない中で国だけに頼るのはとても危険です。

 ーー経済界を去るにあたって、中堅層や若者に伝えたいことは何でしょうか。

 横内 私が頭取を務めた北洋銀行は、トップダウンの経営スタイルが長く続いていたと判断していました。トップダウンには経営のスピードなどメリットがある反面、デメリットとして下が育ちづらいことが挙げられます。私はボトムアップの企業文化をつくっていこうとしました。経営に関する本を読んでいて思ったのは、ボトムアップだけではだめでその本にも書かれていた『ミドルアップ、ミドルダウン』が必要ということです。中堅の人たちが、上にもがんがんとものが言えて、部下たちを強く引っ張ることができる組織文化です。北洋銀行在籍中は行内報など様々な機会に『ミドルアップ、ミドルダウン』の大切さを訴えてきました。私は地域や行政組織にもこのことは通じると思っています。コロナのような危機に対応する場面でこそ中堅層と若い人たちの働きが大切で、トップだけでは危機は乗り切れないと思います。(終わり)



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