北洋銀行(本店・札幌市中央区)の頭取、会長を務め2018年6月に就任した非常勤顧問を20年6月に退いた横内龍三氏(76)。北海道経済同友会の代表幹事も2年前に北洋銀の石井純二会長(69)に引き継いでおり、今回で経済界から完全引退した。横内氏は、北洋銀頭取の脱日銀化を進め、会長ポストを代表権のない役職にするなどコーポレートガバナンス(企業統治)改革を進めてきた。顧問就任は、北洋銀会長の立場で引き受けてきた様々な役職の引き継ぎ期間と位置付け、引き継ぎにめどがついたことで完全引退した。地位やポストに拘らない恬淡とした潔さは、横内氏の真骨頂と言える。完全引退後、時を見て北海道を去る横内氏に北海道への“最後の提言”をインタビューした。
〈よこうち・りゅうぞう〉…1944年7月生まれ、長野県出身。松本深志高、京大法卒。67年4月日銀入行、96年3月人事局長を経て2000年10月東京弁護士会に弁護士登録、田辺法律事務所入所。03年6月札幌北洋ホールディングス(現北洋銀行)監査役、04年10月執行役員副頭取、05年6月代表取締役副頭取、06年6月代表取締役頭取、12年4月代表取締役会長、18年6月非常勤顧問、20年6月退任。12年4月から18年4月まで北海道経済同友会代表幹事。

 ーー最初に北海道に来られた時の北海道経済の印象はどうでしたか。

 横内 北海道は、第2次産業のウエートが少ないため1人当たりの生産性が低いという認識を持っていましたが、実際に北海道に来てその通りだという印象を強く持ちました。当時、青木由直北大教授が北大卒業生たちを集めてソフト産業の拠点『サッポロバレー』を作ろうと動かれていました。そういう動きを大きくしなければいけないと思いましたが、経済界全般にそういう意識が乏しかったように見えました。私も初めは製造業を何とか誘致できないかと思ったのですが、グローバル化で日本の製造業がどんどん海外に出ていく状況でしたから、製造業を北海道に誘致することは難しいと考え直し、ニュービジネスの育成に力を入れなければならないと舵を切りました。以来、銀行の仕事や北海道経済同友会の仕事を通じて同じ問題を追いかけてきました。

 北海道の人たちは、『そうですね』と口では言いますが、その後の行動があまり伴っていないと感じます。ご自分の会社が順調であればそれで良いと考える経営者が少なくなく、北海道経済を何とかしようと考える経営者はあまり多くないようです。地元の中堅企業の経営者が、もう少しそういう観点で頑張らないといけないという気持ちはいつも持っていました。
 私が代表幹事を務めた北海道経済同友会は個人参加ですから、本当の意味での経済界活動は、北海道経済連合会や札幌商工会議所が担っています。いつも機会があれば、道経連や商工会議所の皆さんには、『しっかりと業界を引っ張り上げてください』とお願いをしていました。

 ーー中堅クラスの企業経営者が自社のことで「良し」としている点はあるかもしれません。北海道全体をレベルアップしていくような行動なり連携を、「道経連」と「札商」にしっかりやってほしいと。

 横内 そうしたことが組織的にできると良いのではないか。それを引っ張るのは、道経連と商工会議所。現在の真弓さん(昭彦・道経連会長)にはもう少し頑張ってもらいたい。道経連は、これまで比較的短い期間で会長が変わり、北海道経済を引っ張っていくというプレゼンスが少し弱かったと思います。



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