ーーポストに恬淡としているのは横内さんの人生観からくるものですか。
横内 私は北海道に来る前、日銀を退職して弁護士をしていましたが、企業法務を中心に活動していました。その時から、ポストを降りた後は潔く離れることが必要だと思っていました。しかるべき人が次々と登場していった方が良い。一人が長くやることには良いこともある反面、マイナスの影響もあります。そのポイントを踏み外さないようにするのが経営者として大事なことだと思います。
北海道ではあまり話題になりませんが、日本の企業は世界にどんどん出て行っていますから世界の潮流をしっかり見なければならない。当然、日本企業も昔のようにいつまでも慣習に則って続けていくわけにはいきません。世界標準を目指さないといけないということです。北海道には上場企業が少ないので、北海道の企業経営者の多くが投資家をあまり敏感に感じていません。ただ、企業が大きくなっていくと必ずそういう問題にぶつかります。あらかじめきちんと準備をした上で上場を目指すように進んでもらいたいし、そういう経営をしていくべきだと思います。ある程度の企業規模になると資本の調達が課題になります。そのためには株を社長の親族が持っているわけにはいかなくなります。コンプライアンスを徹底して資金を調達しながら道内企業は大きくなってもらいたいですね。
札幌に証券取引所があるので、札幌で上場することは地元企業にとっては大きな魅力です。全国各地の証券取引所が吸収されていった経緯を考えると、札幌の証券取引所が今後も存続していくことは大変なことだと思います。しかし、札幌の証券取引所から東証2部、1部へ段階的にステップアップできることは北海道の企業には大きなインセンティブ。それぞれ上場基準が厳しくなっていくので、そのプロセスを若い経営者がしっかり勉強できる環境があります。ステップアップしていく企業経営者の姿を見て、自分も頑張ろうという若い経営者がどんどん出てくることを期待したいですね。
ーー札幌は福岡とよく比較されますが、どう見ていますか。
横内 福岡にはオール九州でものごとを考えるベースがあるように感じます。「九経調」(公益財団法人九州経済調査協会)という経済研究所がありますが、全国でも有名な地方の研究所でオール九州の分析をしています。北海道にも九経調のような研究機関が必要だということで、北海道二十一世紀総合研究所を九経調に匹敵するような研究所にしようと力を入れてきました。
私は、北海道には他の地域よりも発展していく力があると思います。大学に関して言えば、医学部は三つありますし、特色ある工科大学も北見と室蘭に、帯広には畜産系大学もあります。人数だけでなく質の時代に入ってくる中で、最大に生かしていける財産を持っているのが札幌、北海道ではないかと思っています。