横内龍三・北洋銀行元会長インタビュー「北海道に贈る最後の提言」

金融


 ーー17年間の北海道での生活で、北海道の成長や変化を感じていますか。

 横内 北海道が成長したという直接的な実感はありませんが、少子化の問題は多くの人の認識としてしっかり根付いたと思います。ヒト・モノ・カネと言うように人口は経済活動の原点。そのことに多くの人が認識するようになりましたが、どう対応するか、成果は出ていません。今後、中長期的に見ても北海道の人口問題はなかなか成果が出せないのではないか。これからは質の問題になってくると思います。一人ひとりの質を高めて生産性を上げていかなければ北海道の経済成長は実現できません。
 そういう流れの中でコロナの問題が出てきました。コロナが一定程度収束しても、働き方はこれまでと変わってくるでしょう。働き方が変わってくる中で、生産性向上にも結び付くようなニュービジネスを育成する流れをつくっていかなければなりません。

 ニュービジネスに繋がるかどうかは分かりませんが、北海道経済同友会では北極海航路を取り上げてきました。北海道の地の利を生かせるからですが、目先で考えれば北極海航路の実現はいつのことになるか分からない。そういう声が必ず出ますが、私はいつもこう言ってきました。『中国も韓国もロシアも北極海航路の調査船を建造して進めているのに日本は調査船すら作っていない。中国、韓国にも完全に遅れてしまいますよ』――と。そうは言っても皆さんの動きは鈍かった。行政機構の地方分散の中で、『国立極地研究所』という南極と北極を研究する研究所のうち、北極セクションを北海道に移転してはどうかと道同友会で提言しましたが、関係機関は真剣に聞いてくれなかったですね。

 ーーそれでも横内さんは率先して北極海航路に取り組まれた。

 横内 地の利を考えると北極海航路の拠点は苫小牧だと思ったからです。苫小牧は行政や経済界含めてかなり盛り上がりました。苫小牧が北極海航路の主要な港に成長すれば、北海道にとって相当の経済効果が期待できます。港湾と輸送は裾野が広く経済効果も高い。今は夢物語かも知れませんが、苫小牧の経済界や市の関係の方たちは関心が強いので、ぜひ頑張って続けてもらいたいと思います。

 ーー横内さんの17年間の北海道生活で残した足跡は大きい。ご自身ではどうお考えですか。

 横内 北海道は地域が広いので、『北海道』を一つと考えて議論していてはいけません。北海道の中のそれぞれ地域の特性を捉え、その特性を生かす形で全体として発展していくのが良いのでしょう。そうした地域の経済力など数字に基づいて分析するという動きを、道同友会の中で根付かせることができたのは良かったと思います。この動きを発展させて道同友会では政策提言をすることになっているようです。そうしたきっかけをつくることができたのは良かったと思っています。

 ーー北洋銀行の非常勤顧問も今年6月で降りられました。

 横内 北洋銀行の会長から非常勤顧問になって2年で退きましたが、取締役を退いた者が相談役や顧問として影響力を行使するようなことはコーポレートガバナンス上の問題点というのは常識です。もちろん陰で糸を引くようなことをしない立派な人だっています。しかし、時として世の中には変なケースが出てくるものですから、最近は形の上でもきちっとしておかないと株主や投資家の信頼は得られません。私は顧問になってから銀行の縁で引き受けている公職を2年間で引き継いでもらうようにしました。最後まで残っていた北海道エアポート(千歳市)の非常勤取締役も、今年6月に北洋銀行の安田光春頭取に引き継いでもらいました。これで公職は、『民族共生象徴空間交流促進官民応援ネットワーク』の代表だけになりました。民間の『北海道シマフクロウの会』も会長を引き継ぐことが決まっています。

1 2 3 4

関連記事

SUPPORTER

SUPPORTER