企業や団体にとってファシリティマネジメント(FM)という考え方が、経営の重要な要素になってきた。建物や施設の新築・増改築、現有施設の維持管理、とりわけ如何に長期間快適に建物施設を使っていくかが、経営戦略上も必須の条件になってきたからだ。
FMを20数年間手掛け、社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会(JFMA)設立やファシリティマネジャー資格試験の創設などに取り組んできた成田一郎大成建設FM推進部チーフFMコンサルタントが、9月27日札幌市内でFM初心者向けにわかり易く講演、その内容を抜粋する。


〈ファシリティとは土地、建物に設備、インテリア、情報インフラ、家具、アートなどにこれらを含む環境のことを言う。ファシリティマネジメントとは、企業・団体のためにファシリティを有効にマネジメントすること。マネジメントとは、企画・管理・運用を指し、戦略をもって実行するという意味〉
〈人と同様にファシリティも企業・団体にとって重要な経営資源。FMのミッションは人々を幸福にすること。働く人々や企業・組織を、そして社会や地球を幸福にすることで、これはCSR(企業の社会的責任)にも通じる〉
〈FMは、無駄なコストを減らし、収益や生産性、モチベーションを高め、さらに変化対応力や事業継続性も付与するもの。地震など自然災害にどう対応し、事業を継続していくかはFMの大事な考え方。コンピューターや医療機器など精密機器を自然災害からどう守るか。地震があったある地域の病院で機能を継続できたところとそうでないところがあったが、免震構造を採用していたかどうかが病院機能継続の分かれ目だった〉
〈欧米では、ファシリティマネジメントを司る副社長がいる。それだけトップはFMに重きを置いている。FMの基本は、まず自分のファシリティの状況を知るということ。ハードの診断、ソフトの診断、自分の位置・レベルを知ること〉
〈FM業務を合理的に行うには、FMのためのデータをパソコンを使って一元管理することが有効。かつて保険会社同士の合併で、お互いの会社の資産を有効活用するための事前折衝で、一方の会社はパソコン上に全国の資産が打ち込まれていて瞬時に把握できたが、もう一方の会社は紙ベースでデータ化されていなかったので、すり合わせに手間取り、合併数年後には両社の違いがはっきり出て紙ベースの会社は吸収合併のようになってしまった〉
ファシリティ関連を担当する組織は、施設を作ったり管理したりする建設部だとか建築計画部、営繕部という受身的な組織だったが、FMの重要性が認識され始めたことで、会社・団体のために施設を活かす組織に変わってきている。名称もFM部や施設情報部、ネットワークセンター、プロジェクトセンターなど戦略的な組織と位置づけられるようになっている。
FM手法は、閉塞感が漂う北海道経済の自律的成長を促す鍵になる可能性がある。

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