一般社団法人北海道ファシリティマネジメント協会(略称HFMA、本部・札幌市中央区)の新会長に生島典明・元札幌市副市長(68)が就任した。9月に書面開催された第1回臨時総会で選出されたもので、任期は1年間。生島新会長に抱負などを聞いた。
〈いくしま・のりあき〉…1952年6月札幌市生まれ。札幌北高、北海道大学法学部卒、札幌市役所入り。財政部長、総務局長を経て上田文雄市長12年間のうちの後半6年間副市長を務めた。現在、一般財団法人札幌市スポーツ協会会長、公益財団法人北海道スポーツ協会副会長、北海道バレーボール協会会長なども務めている。

 ーー新会長就任の経緯と抱負を聞かせてください。

 生島 HFMAは北海道・札幌冬季オリンピック招致を大きなテーマとしています。私は札幌市が2026年冬季オリンピック・パラリンピック招致を一度決定したときに副市長を務めていました。その関係で2017年2月に札幌で開催された冬季アジア大会では組織委員会事務総長も経験しました。こうした経験からHFMAが進める冬季オリ・パラ招致の力になれるのでは、ということで会長を引き受けることにしました。

 オリ・パラ開催には施設整備に多額の資金が必要と思われがちですが、既存設備の再利用や新規に作った設備のオリンピック後の有効利用など、FMの考え方をフルに活用すれば経費削減は可能です。そうしたFMの観点からオリ・パラ招致を支援できるのではないかと考えています。いわゆるハコモノは、作って終わりという誤解もありますが、建物の効用を長続きさせて有効に使っていくことは、今後よりクローズアップされてきます。定期的な修繕、更新などを含めたFMの考え方は非常に重要になってくると思います。

 ーーHFMAの活動を市民や経済界により広く認知してもらうことも必要ですね。

 生島 1972年に札幌で冬季オリンピックを開催した時は人口が100万人でした。今は197万人で、これから減少していきます。以前は、公共建築物などはどんどん壊して新しく建てるという考え方でしたが、人口減少と超高齢化の中で、建物を長持ちさせて効用を高めていくということが求められています。作る時点からそういう考え方を持つことが必要です。そうしたことを広めていくことがHFMAの役割だと思います。
 
 市役所勤務の頃、長期的な計画策定のセクションにいたことがありますが、そのときにPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ=公共施設の建設、維持管理、運営等に民間のノウハウや資金を活用すること)研究を北海道大学の宮脇淳教授と一緒に取り組みました。そうした研究から市の第1号PFIとして手掛けたのが、手稲山口の山口斎場でした。ライフサイクルコストという概念を導入して、建物を建てるコストだけではなく利用開始から利用期間中に必要となる資金など非常に勉強になりました。PFIとFMは考え方として通じるものがあります。

 ーーウィズコロナ時代、FMの重要性がますます高くなります。
 
 生島 コロナによってオフィス市場がどう変わっていくのか、そのことに対してFMがどう貢献できるかは目の前の課題です。しかし、コロナがどうなっていくのかが見えないのが一番大きな問題です。ただ、以前の状態にそのまま戻ることは考えづらい。ウィズコロナ時代にどういう建物が求められ、どういう管理をしていくのが良いのか、今後考えていかなければならない難しい課題だと認識しています。

 ーー道内で「認定ファシリティマネジャー」の資格者を増やすことも課題になっています。
 
 生島 JFMA(公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会)が認定する「認定ファシリティマネジャー」は、現在道内で340人います。これを当面500人にすることを目標にしたい。資格試験の合格率は、東京では50%ほどですが道内は30%ほどで差があります。守備範囲が広く建築や財務の要素も含むため、資格取得の講習環境が十分ではない面があるからです。今後は、講習方法を工夫して合格率のアップを進めていきます。HFMAが一生懸命に資格取得の後押しをして、「認定ファシリティマネジャー」の活躍の場を広げていきたいと思います。

 また、HFMAの会員数は現在約170社ですが、200社を目指したい。縦割りの業界団体が多い中でHFMAのような横串を通すような団体はあまりありません。建築、設備、警備など異業種交流組織の側面もあります。施設建設とマネジメントにおいてFMは根幹をなす考え方なので、HFMAの活動を通じて広く社会に貢献していけるような組織にしたい。


5人の方がこの記事に「いいんでない!」と言っています。