食品スーパーの出店が相次ぐ苫小牧市内。均衡していた業界は一転、厳しい競争環境に置かれる。道内の食品スーパー(SM)業界は、アークス(同・札幌市中央区)、コープさっぽろ(同・同市西区)、イオン系のマックスバリュ北海道(同・同市中央区)の3極と言われるが、苫小牧は地場SMである豊月(本社・芦別市、本部・苫小牧市)が5店舗を展開する4極の地。風雲急を告げる苫小牧で豊月はどう戦うのか。豊岡憲治社長に聞いた。IMG_6927(写真は、豊月の見山食彩館)

 ――マックスバリュ北海道が「沼ノ端店」に続き「弥生町店」(仮称)をオープンさせます。また、ホクレン商事(本社・札幌市北区)も「苫小牧しらかば店」を7月中旬にオープンさせています。
 
「競合店が相次いで出店しているが、基本的にはそれらの店舗との戦いには巻き込まれないようにする。当社以外は、すべて全道展開している大手SMだ。グローサリー商品(一般食品)や日配品(豆腐、揚げもの、納豆など)での価格競争は避けられないが、当社の基本戦略は生鮮食品の売上げ比率を50%以上にする高質化だ」
 
 ――高質化路線とはどういう戦略ですか。
 
「高質化というのは、店づくりのベースをお客様の視覚と嗅覚に訴えるようにすること。お客様目線に立って本物の商品を提供、『美味しい』『新鮮』と感じてもらう。それによってストアロイヤルティ(店舗への信頼度・愛顧度)を口コミでも伝わるように高めて行く」
 
「高質の店舗は、現在、札幌市内の『BOSCO』(手稲区)、『VAlue』(清田区)、江別市内の『LISTA』、苫小牧市内の『Vian』、『OASIS』の5店舗。新店や既存店の業態転換で高質化にした店舗もあるが、5年目『LISTA』と4年目の『BOSCO』がようやく花開いてきた。高質化路線に舵を切って5年、人材が育つまでにかなりの時間が必要だということを痛感した」
 
 ――高質店舗のチェーン展開は難しいと思う。店舗間で差がでるのではないですか。
 
「確かに高質店舗では店舗間に差がある。これを早く一定レベルまで引き上げるため、スーパーバイザーを置き、店づくりの指導に乗り出している。また、各店舗に生鮮改善委員会を立ち上げ、両輪で個店のレベルを引き上げる仕組みを導入した」
 
「パート社員も他の店舗の事例を学び、商品づくりやコーナーづくり、売場づくりに参画している。商品をアピールするコトPOPで熱心に取り組むパート社員もおり、全員参加で店づくりを共有できるようにしていく」
 
 ――苫小牧市内の既存店舗はリニューアルしますか。
 
「人材が育ってくる2~3年後に苫小牧の古い店舗である『双葉店』、『見山店』の2店舗を売場面積500坪ほどに建て替えて高質店舗にする計画だ。この2店舗については既に周辺の土地を買い増しており、いつでも建て替えられる環境を整えつつある」
 
 ――「沼ノ端店」の目と鼻の先に競合店が出ました。
 
「沼ノ端地区は、ファミリー層が多く価格に敏感だ。昨年7月のトライアル店舗の出店でも影響があったが、今度の店の影響も出るだろう。ある程度の売上げ減少は織り込んでいる」
 
 ――店舗の多くは自社所有で償却も終わっている店舗が多いのは強みですね。
 
「以前は金融機関の借り入れ負担もあったが、それもあと数年で返済完了する。私は大手3極によるSM業界の寡占化が進むと見て5年前に高質化路線に進むことを決めた。収益店舗の近くに競合店が出てくれば収益が減るのは避けられない。そんな競争に打ち勝つには生鮮比率を上げ品質と鮮度でお客様を呼び込む高質化が生き残りに不可欠と考えたからだ。ここ数年で売上げは落ちたが、経常利益率はそれほど下がってない。高質化路線で数年後には売上高経常利益率は3~4%に戻るだろう」
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 苫小牧市内のSM市場は、道央市民生協を引き継いだコープさっぽろが収益店の「ステイ店」「パセオ川沿店」を含め5店舗を展開しシェアトップ。それ以外はほぼ同じくらいのシェアとされている。豊月は5店舗、マックスバリュ北海道は6店舗(8月に7店舗に)、ラルズとホクレン商事が各3店舗、トライアルカンパニーが3店舗を展開しているが、今後、苫小牧のSM業界地図はどう塗り替えられていくだろうか。


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