北海道のキリングループが、2015年の北海道市場にどのように向き合うかを示した事業方針説明会。前回に続き今回は、操業40周年の節目を迎える北海道千歳工場の取り組みやワイン部門のメルシャン、清涼飲料水の北海道キリンビバレッジの方針を紹介する。IMG_2747(写真は左からキリンビールマーケティング執行役員北海道統括本部長佐部成彦氏、キリンビール執行役員北海道千歳工場長名川誠氏、メルシャン北日本支社北日本営業部第一支店長桶本幸伸氏、北海道キリンビバレッジ社長後藤晃氏)

 まず、キリンビール北海道千歳工場。事業方針を説明したのは名川誠工場長。  
 千歳工場は、今年が操業40年、地域に大きな恩返しをする年と位置づける。その一つが地域限定ビールの生産だ。22年前、1993年に「北のキリン」というブランド名で地域限定ビールを出した経験が千歳工場だが、それ以降は作っていない。今年、北海道ならではのビールが実現する。「北海道の広い大地に相応しいすっきりした飲みごたえを一番搾り製法を使いながら今年5月に出したい」と名川工場長。
 
 8月には、3回目になる「キリン北海道ビアフェスタin千歳」を開催。そこでも地域限定ビールを提供するほか、千歳が鶏卵の生産量全道一に因み卵をアピールするイベントも組み込み、卵を使うことが条件になっている千歳バーガーを大集合させる予定もある。千歳バーガーは、もともとキリンの千歳工場にある「ハウベ」というレストランから始まったもので、今では千歳、苫小牧、恵庭の各地域の様々な店がオリジナルな千歳バーガーを提供。直近ではANAクラウンプラザホテルのレストラン「ハスカップ」でも発売され15~16店が“千歳バーガー”を通じた“千産千消”で地域活性化に取り組んでいる。
 
 同工場は、2005年から60年間継続する森林保全事業として「千歳水源の森づくり活動」に取り組んでいる。ビールづくりに欠かせない水、その水を育む森林を大事にしようということで始まった活動だが、2年前からは、こうした活動に賛同する地域住民や一般市民も参加するようになり全体参加300人の1割、30人が一般公募による参加。今年はさらに人数枠を増やす考えだ。千歳工場には昨年5万人が来場、過去最高を記録した。実際にビールを作る体験ができるような工夫をしたり、今年は一番搾りの地域限定ビールも市場より早く先行的に工場見学者にお披露目することも検討している。
 
 続いて、メルシャンの北海道事業について北日本支社桶本幸伸営業第一部第一支店長が説明。
 国内のワイン市場全体は、昨年もデイリーワインが伸長するなど8年連続の増加になった。市場全体で5%の伸びがあった中でメルシャンのワイン部門は6%の伸び。北海道は市場全体が2%の成長だったがメルシャンは8%増と大きく伸びた。その要因は、純国産「日本ワイン」である「シャトー・メルシャン」が12%増となったほか、売上げの基盤になっている国産デイリーワインの「おいしい無添加ワイン」を中心に堅調だったこと、市場全体が9年連続で伸長しているチリワインの中で強いブランドとして知られる「コンチャ・イ・トロ」の「カッシェロ」が8%増、「サンライズ」5%増、「フロンテラ」10%増になったことが牽引した。
 
 ワインの市場全体は2009年から6年連続で伸びている。1998年にポリフェノールが注目されたことで赤ワインブームとなり、この時のワイン消費量が過去最高だったが、14年はそれを抜いた。「年々増えているのは一過性のブームではなくて、ワインが日常の酒になったからと考えている」と桶本支店長。
 
 2015年活動方針としてメルシャン北日本支社が掲げるのは、「北海道で2018年に『ワインと言えばメルシャン』と言ってもらえるになること。6人に1人はメルシャンワインを飲んでいる状況を目指す」と桶本支店長は力を込める。数字上ではシェア17%になるため「チャレンジ17」を北海道のスローガンに掲げる。具体的展開として、「シャトー・メルシャン」をフラッグシップとして成長させるほか、ワインが伸長している中で裾野拡大に向けて取り組みを継続的に実施。さらにメルシャンの中で強い12ブランドに投資をしてより強い基盤を作って行く――この3つの柱で進めていくとしている。
 
「シャトー・メルシャン」をフラッグシップにする具体策は次の通り。「シャトー・メルシャン」と言ってもいろいろなシリーズがあり、スタンダード、日本の地ワインなど底辺についてはある程度訴求ができているため、今年は中核レンジであるディストリクトシリーズの商品を訴求する。もう一点は、一昨年から発売している福島と秋田のぶどうを使った「北のフィネス」を今年、北日本限定として販売し「シャトー・メルシャン」の認知を上げる。
 
 新しいお客の創造、裾野の拡大に向けては甘口ワインやフルーツワインが伸びていることに着目。これは、ワインを飲む客のエントリー層が拡大しているためで、こうしたエントリー層に向けた商品を開発していく。「ギュギュと搾ったサングリア」を3月24日に発売するが、赤ワインと白ワインをベースにした2種類を用意、メルシャンならではのフルーティでリッチな果実感を味わえる混濁果汁を使用、飲みやすい甘口のワインに仕上げている。
 
 また、今年は、新しくワインを飲んでもらうため一般のお客を対象にしたダイレクトコミュニケーションの機会を作って行く。実際に来場してもらいワインセミナーや食のマッチングを実施、またメルシャンの社員と会話することでいろんな疑問点などを払拭する機会にする。
 
 定番ブランドへの注力では、12ブランドあるうちで北海道では国産デイリーワイン、輸入デイリーワインが受け入れられているため、この分野に注力、国産デイリーワインの中でも8年連続ナンバーワンの「無添加ワイン」をさらに強化、2月にはリニューアル。輸入デイリーワインはチリワインの中の「コンチャ・イ・トロ」ブランドを強化するが、昨年新発売した「ラデラ・ヴェルデ」が非常に北海道で受けが良かったため、720mlペットボトルに加え今年3月に1・5ℓのペットボトルを新発売してさらに活性化を図っていく。
 
 2015年は市場全体が4%程度の伸びになるが、その中でメルシャンの北海道地区は10%増を目指している。なおメルシャンでは梅酒、焼酎事業も行っていて、梅酒は昨年、市場全体で7%増と非常に伸びたがメルシャン全体では前年並みの着地だった。今年については市場全体が4%伸びると見ているが、前年並みを維持。数字は伸びないが「まっこい」ブランドで梅酒市場を育成する。また、焼酎市場は全体がマイナス3%とシュリンクしたが、メルシャンの北海道市場ではマイナスで15%の大幅ダウン。今年は市場全体が前年並みの中でメルシャンの目標も前年並み。その中で「白水」ブランドを育成、本格焼酎を強化する。
 
 最後に、清涼飲料水を手掛ける北海道キリンビバレッジ。15年の事業方針は後藤晃社長が明らかにした。
 清涼飲料水の市場動向は、全国ベースではマイナス2%で、キリンビバレッジ全体でも2%のマイナスだった。消費増税後に商品動向の見極めが遅かったということがある。北海道は清涼飲料水全体でプラス1%、キリンビバレッジの北海道実績もプラス1%強で業界を少し上回った伸び率だった。「生茶」はプラス5%、「午後の紅茶」も「おいしい無糖」が前年比23%増と全国の中でも特筆すべき伸びだった。「もう少し数字は取りたかったが、特に北海道固有の問題として低価格100円コーヒー販売が思ったよりも競合が激しく、これによって自販機販売がマイナスになり伸びを妨げた」(後藤社長)。
 
 15年は「午後の紅茶」を大きく伸ばすことにしている。今年は発売30周年の記念すべき年でリニューアルも行い大きく伸ばす。特に北海道からその流れを作ることにしている。食事や料理をより美味しくするのは紅茶だということをキャッチフレーズに、今まで嗜好飲料として飲んでいる人たちだけでなく、広く日常のお茶として認知されるような活動を強化する。紅茶の中にはポリフェノールが入っており、どの飲み物よりも口の中をさっぱり素早くきれいに洗い流す作用がある。美味しい食べ物を食べて一口紅茶を飲むと口の中が綺麗になって次に食べたものがまたおいしいということをいろんな形で試す機会を作って行くとしている。
 
 また、通常は販売先の量販店、コンビニエンス、料飲店と別々に施策を展開しているが、大きく数字を取るためにばらけていた施策をある時期にまとめて同じテーマで展開する。この展開には北海道キリンビバレッジの自販機1万4000台を含めて「食事に合うのは紅茶」ということを広くアピールする展開をする。
 
 どさんこの人材活用では、同社の契約社員(全体の約1割)を本人の希望で新たに導入するエリア限定社員として社員化する。4月から始めてより地域密着の営業活動を行う。
 また、女性の社員がもっと活躍できる会社にするため制度・仕組みを変える。女性が働きやすい会社、女性が誇りを持てる会社に変えていくプロジェクトを組み様々な角度から検討する。  
 
 どさんこへの貢献ということでは、北海道での製造比率を40%に高め早い段階で50%に引き上げる。北海道は、キリンビバレッジの全国売上の中でも高い構成比率になっているため様々なイベントの参画も行っていく。旭川で開催されるスノーボードW杯にキリンビールと一緒に協賛、そのほか各地域へのイベント参加、自販機を有する北海道企業として防災時に役立つように地域の市町村と一緒に社会貢献活動にも積極的に支援する。
 
 15年は、キリンビバレッジ全体では6%の伸びで2億500万箱が目標だが北海道は8%増で展開。「特に『午後の紅茶』はプラス30%と営業上から言えばびっくりするような数字だが、これを全社員一丸となって達成したい。根拠はきっちりとある。紅茶を飲む量が首都圏と比べるとまだまだ少ないからだ。昨年、無糖紅茶についてはいろんなチェーンとタイアップして認知率は全国一になった。飲んだことがある人の全国ナンバーワンのエリアになった。今年は食とのマッチングを大々的に行うことによってプラス30%にもっと行く。これを必ずや実現して全国に北海道の活動を、北海道の食材とともに提供していきたい」と後藤社長は結んだ。


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