IMG_8642 セイコーマート(本社・札幌市)の赤尾昭彦会長(73)は、7月中旬に札幌パークホテルで行われた同社の「2014年政策説明会」で集まった約800人のメーカー、卸など取引関係者を前にセイコーマートの商品政策について語った。赤尾会長は現在、店頭展開している「さんまの蒲焼重」を取り上げ、この商品に凝縮されたセイコーマートのスピリットについて訴えた。以下、赤尾会長の発言要旨をお届けする。(写真は、セイコーマートの政策について語る赤尾昭彦会長=2014年7月18日午後、札幌パークホテルで)
  
「現在、店頭では『さんまの蒲焼重』を展開している。数年前から品薄などによって『うなぎの蒲焼』が大きな問題になった。以前は当社も『うなぎの蒲焼』を扱っていたが、この先この商品の販売は難しくなるだろうという見通しのもと、代替え品をどうするかと考え、さんまの蒲焼にシフトすることにした。さんまは毎年獲れるが、どちらかというと百年前も今も塩焼きにするのが一番の食べ方になっている。これは近代的な食べ方ではないのでは…ということで、さんまの蒲焼をうなぎに代えてやっていこうと開発した」
  
「7月はじめから根室のグループ工場で今年の生産を始めた。さんまの頭を取って三枚おろしにして腹も綺麗に取る。その後に一次処理をしてサンマの独特の強い臭いを消す。自分たちですべてをするのではなく、根室の加工場4社に委託して、我々の工場に持ち込み、下準備をして何食かをひと揃いにしたうえで協立乳品というアイスクリームや冷菓など冷凍食品を製造している会社に持ち込むのが一連の流れだ」
 
「今年の目標は20万食。さんまの原体は35tほど使っている。本格的に投入して3~4年が経つが、今年は7月中旬から店頭に出して非常に売れ行きが良く、これまでにない手応えを感じている。この一両日の生産量を見ると、1万食ずつ出ているが今年は20万食限定なので20日で売り切れてしまう計算だ」
    
「この商品は、季節感をどう出していくかが土台にある。もう少しすると新聞には〈さんまの季節になった〉という記事がたくさん出てくる。それを読むとお客様もさんまを食べたいと思うだろう。そういう消費者の志向を取り込んで満足してもらうことが当社の商品政策の基本として入っている」
 
「さんまの蒲焼のように、いろんな魚も食べ方でも変えて行かなくてはいけないと思っている。我々はマーケットを知っているが産地はマーケットを知らない。マーケットの情報をキャッチして如何に現在に合った商品づくりをし、一番美味しい状態でお客様に食べて頂くか――それがセイコーマートの商品政策の基本になっている」
 
「グループ会社のある根室ではさんま、カレイ、タコ、イカなど様々な水産物を扱っているが、標津町ではサケも扱っている。スライスをしてお客様の要望に応える形の商品を作っている。我々は原材料を全部使う。切り身にして天ぷらの衣をつけて揚げ、弁当用として店内調理のホットシェフでも使っている」
  
「自社グループの店舗で売れるようになったら外部にもそれを使ってもらう形で商品展開をしている。現在、グループの水産会社は年商13億円くらいになって利益も順調に出ている」
 
「メーカーや小売業界では安いもの、美味しいものを作ると言うが、誰かが作ったものを誰かが引き受けてそれを運んでさらに誰かが買って誰かに売ると複雑で見えない流通経路を辿る。商品のトレーサビリティと言っているが、そんなものは表示を貼り変えたら分からなくなってしまう」
  
「我々は直に原料・原体を現地で買い付けて、時期が来たらそれを使って食材を作る。さんまやサケなどのほかイカの切り身も無添加で作っている。なぜ無添加で珍味をつくらなければならないかというと、輸入している珍味は確かに安いが、食べているうちに嫌になって食べられなくなるからだ。本当のイカの美味しさがでていない。美味しくないイカの珍味ばかりを売っていたらいずれマーケットがなくなってしまうだろうということからイカの切り身を自社でやりだした」
  
「さんまの蒲焼重は20万食で1億円商材、とうきびも並行して売ってこれも1億円が目標。その後は、ボジョレーが入ってきてキャンペーン展開し相当量を売る。解禁日から1週間のうちに目標の90%くらいを売ってしまう。そうしているとクリスマス時期になる。既にクリスマス商材の準備もできている」
  
「コンビニエンスストアは『開いていて良かった』とか『皆が買って美味しい』などと言っているが、我々は北海道という地域をどう活性化していくかという切実な問題を抱えている。道内の地方からお客様がいなくなったらセイコーマートは持たない。何とか地方の人口減少に歯止めがかからないだろうか、そういうことを考えながら各地域に工場を点在させてそこで売上げ上がったら工場を増設し人も雇う仕組みを採っている。
 単なる生活密着型店舗というよりもセイコーマートの独特の考え方があるし、そうすることで続いてきた。そんな基盤も大体出来上がったと考えている」
   
「もう一つ重要なのは、そういう考えで作ってきたグループ子会社の社長にセイコーマートの入社1期生、2期生が就任するようになってきたことだ。新しい知識や考え方を持った社長たちが出てきて、昔からある北海道の味を新しい形の商品に作り変えて何とか北海道を活性化できないだろうかと考えている。セイコーマートはそれを柱に政策展開している」
(※赤尾会長の発言を元に本サイトが構成)


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