JR北海道の中島尚俊社長(64)の遺体が18日朝、小樽市のオタモイ海岸の沖合で見つかった。行方がわからなくなった12日から7日後、帰らぬ人となった。北海道を代表する企業の現職トップが自ら命を断った衝撃は計り知れなく大きい。多くの何故を残しながら先を急いだ中島社長は何を守ろうとしたのか、何を残そうとしたのか。(写真=中島社長が入水したと思われる石狩浜の現場には花束が手向けられていた)

 
 石勝線の特急脱線炎上事故以降の相次ぐトラブルや運転士の居眠りなど不祥事の続発、また時間外労働の三・六協定違反などJR北海道は民営化以来、最大の経営危機に直面していたことは間違いない。
 
 経営危機に直面した企業のトップの多くは、事態を正面から受け止め、危機を乗り越え再発防止など再生の道筋をつけることが経営責任だと明言する。経営危機を招いた原因を究明し、安定軌道への道筋を付けるまでがトップの役割だと強調するケースが多い。
JR北海道の中島社長も、当面の危機を打開し再発防止体制を敷くことが責任の取り方と常々語っていた。
 
 一連の列車トラブルに対する改善措置報告書をまとめ、危機打開の道筋をつけた中島社長はまさに自らの経営責任を全うしようとしていた。そして国土交通省へ改善措置報告書を提出することが最大のヤマ場と見られていた。
 
 しかし、提出期限の6日前に中島社長は失踪、遺体で発見されるという最悪の結果になってしまった。
 
 死を急いだ理由は、中島社長本人にしか分からない。死を選んだ多くの何故に対する答えは、残された者たち一人ひとりが自問し今後の経営や生き方に反映させていくしかない。
かつて中島社長は、北海道新幹線の札幌延伸についてこう語っていた。
 
「九州新幹線は、ものすごく利用率が高い。長距離の輸送手段ではなく、身近な鉄路として子どもたちが塾通いに使ったりしている。また、通勤通学など普段の生活の一部に利用されている。北海道新幹線が札幌まで来ると札幌―函館間が45分から50分になり、生活の一部になる。例えば函館の学生が札幌の大学まで通うのに下宿せずに済む。新幹線は地域を線で結ぶため東京だけでなく北関東、東北の利用客も増えて北海道の経済に対する効果は大変大きい。なんとしてでも北海道は新幹線の札幌延伸を実現しなければならない」
 
 北海道新幹線札幌延伸を含め、中島社長の思い半ばでの命終から何を得ていくのかがJR北海道をはじめ道内経済界に投げかけられている。


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