札幌信用金庫(本店・札幌市)が札幌市中央区南2条西3丁目に建設する新本店ビル建設構想は、北海道財務局と札幌市役所の狭間で揺れている。金融機関を監督する道財務局は金融機関の商業施設併用を認めず、札幌市は駅前通のメーンストリートに商業施設の集積を促したいためだ。このため、折衷案を取り、駅前通側の2~3階部分までを商業施設とし本店は南2条通側に開設する可能性が強い。(写真は、現在の札幌信金本店ビル)

 
 金融商品取引法によって、金融機関の他業は禁止されており不動産業などを兼営することができない。このため大手金融機関などでは、資本や人的関係を独立させつつも密接な繋がりのある不動産会社を設立、金融業と不動産業を分けて運営しているケースが多い。
 
 例えば、北洋銀行本店の入る北洋大通センターは、北洋銀の使っているフロアーは同銀行が所有し、テナントオフィスや商業施設ゾーンは交洋不動産が所有している。北洋大通センターも道財務局と札幌市の意向を受けて、駅前通側の4階部分までは物販や飲食の商業施設として、北洋銀本店は大通公園側に設けるようにして両行政機関の要請を受け入れたビルになっている。
 
 札信金は、昨年10月に共同ビルの所有権をすべて取得し、一昨年4月に取得していたパルコ札幌店新館部分と合わせ単独で新本店ビル建設が可能になった。
 
 しかし、北洋銀行本店と同様に、道財務局は金融業務のみのビル建設しか認めず、札幌市は午後3時にシャッターが下り平日以外は営業しない金融機関では駅前通の賑わいが確保できないとして商業施設を含めたビル建設を促している。
 
 札信金の建設する新本店ビルは土地面積約1670㎡の敷地に現在の9階建て以上になる模様だが、北洋大通センターと同様に札信金は本店業務を行うフロアーのみを所有運営し、それ以外は札信金の関連不動産会社が所有運営する形態になりそう。
 
 こうした所有形態を取りつつ、道財務局と札幌市の意向を汲み上げるとすれば、駅前通側に商業施設、南2条通側に本店を置くプランしか選択肢はないようだ。
 
 道内23の信金本店ビルで商業施設と併用したケースは他に例がない。マチの賑わいと金融機関業務のバランスをどう取って行くのか、都市型信金ゆえの悩みは多いようだ。


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