「企業経営で最も大事なことは克己心を持つことだ」――キヤノン代表取締役会長CEOの御手洗冨士夫氏(81)は24日、札幌市中央区のホテルモントレエーデルホフ札幌で開催された北海道経営未来塾公開講座で集まった約300人を前にこう語った。IMG_7186(写真は、講演する御手洗冨士夫キヤノン代表取締役会長CEO)

 札幌商工会議所と北海道商工会議所連合会が主催するこの公開講座は、日本や世界を動かすトップ経営者が体験から得た経営観や、社会の方向性などについて直に話すもので昨年から始まった。北海道から世界に羽ばたく経営者を育成する北海道経営未来塾と連動した企画。

 今年3回目となる公開講座に登場したのが御手洗氏。同氏は『経済社会の革命的変化と企業経営』をテーマに90分間休むことなく話し続けた。今年がロシア革命100周年にあたること、米国中心に進んできたグローバリゼーションがトランプ政権によって内向き志向になり欧州でも同様の動きがあることを示し、「国際経済秩序は絶対に守らなければならない。日本が米国の背中を押して(日本が)リーダーシップを発揮すべき」と訴えた。

 キヤノンは世界150ヵ国で事業を展開しており、社員20万人のうち8万人が日本人、12万人が外国人。御手洗氏はグローバリゼーションが未来の鍵を握ることを確信している発言を繰り返した。

 23年間の米国駐在から得たことにも言及、「株式投資のリターンは金融機関の金利以上でなければならない。経営にあたり役員会や社外取締役の存在よりもっと大切なのは、一人ひとりの経営者が強い意志で適正利益を出す経営ができるかどうかだ。適正な利益を確保することが経営者の基本的な責任だ」と話した。

 御手洗氏は、自身の経営の心構えについてこう述べた。「まず克己心を持つこと。規模の大小問わずトップは厳しい判断をするときが必ずある。弱気に流れそうな自分に打ち克つ力が経営には問われる」。とりわけ事業撤退の判断が一番難しいことを主張、「厳しい判断の先送りによって経営が崩れることがある。それは某社にみられることだ」と名指しこそしなかったものの、東芝の経営判断の過ちを指摘した。

 また、高いところから物事を客観的に見る鳥の目、現場で複眼的に見る虫の目、社会の潮目を読む魚の目を持つことの大切さも掲げていた。集まった北海道の経営者に向け、「北海道には、北極海航路やエネルギー問題など視点を広く高く持てば大いなる可能性がある。北海道こそ経済圏のセンターになるという強い意志を持つべきだ」と締めくくった。


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