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――売り上げを伸ばしにくい状況の中で、利益をしっかり確保しているのはそうした蓄積があるからですね。
福原 スーパーの売り上げ以外に不動産賃貸収入なども入っていますが、利益面でいうと賃貸収入から得られる利益が年々高くなっている状況です。本業のスーパーで稼ぐ利益水準は、決して褒められた数字ではない年が多いのも事実です。
――店舗は自前物件が多いのですか。
福原 土地建物が自前の店舗が多い。その分、固定資産が多くなるので、アークスグループの中では総資産回転率は低い方でしょう。ちょっと足を引っ張っているかもしれません。
――今期は新規出店がないということですが、来期以降の新店舗についての考え方を聞かせてください。
福原 業態については「フクハラ」のストアネームを掲げるか、「スーパーアークス」を掲げるかということになりますが、新しい業態は考えていません。良い物件が出てくれば、十勝圏、釧路・根室圏のどちらでも出店していきます。私が社長に就任した2013年5月以降、建て替えや居抜きの出店はありましたが、新設出店はまだありません。
――ところで、今年はアークス結成20年になります。
福原 2002年11月の発足時はラルズと福原で始まり、ラルズが兄、福原が弟のような立場で、兄の後を必死になって付いていくような状況でした。当時はラルズと原価を合わせるなど、いろいろな取り組みを行って福原にとっては非常にメリットが大きかった。その後、グループ会社が増えていきましたが、現在の10社の中で経常利益額は3番目。多少なりともグループに貢献できているのかなと思っています。
――アークスグループに入っているメリットも大きいと。
福原 商品はアークスで集中化して仕入れるメリットがありますし、商品以外でも教育制度や人事制度の導入なども一緒に対応できるメリットもあります。もちろん、優秀な店舗やデリカセンター、プロセスセンターの優れた面を導入することも可能です。ガバナンス面も大きい。東証プライム市場に上場している企業のグループ会社ですから、しっかりしたガバナンスをしていかなければなりません。業績に関しても、投資家目線で一定の水準を維持していかなければ成長性が評価されない。アークスグループに入っているからこそ、緊張感を持って対応できる面が多いと思います。
――今期のスローガンは何でしょうか。
福原 スローガンは特に決めていませんが、先ほどのコーポレートメッセージをもっと社内に浸透させ、社外にも発信していきたい。現在は、チラシにメッセージを掲載したり、ホームページにも掲載したりしていますが、改装した「星が浦店」(釧路市)には青果、水産、食肉、デリカのコーナーにコーポレートメッセージを掲げました。名刺にも入れるなど、あの手この手で浸透を図っていっているところです。狙いは、私たちの働く意義や価値をしっかりと従業員やお客さま、取引先に伝えていくこと。企業として利益を出すことも大切ですが、利益のためだけに仕事をしているわけではありません。お客さま、取引先、様々な人たちに「福」を届け、幸せにするために仕事をしていることを理解してもらい、従業員にはスーパーで働くことの誇りとプライドを持ってもらいたいと思っています。
――福原の「福」も兼ねているメッセージですね。
福原 そうです。社内で考えたメッセージですが、「福を届けます」というところは、私が考えました。これまでは明確なコーポレートメッセージは策定していませんでした。ミッション経営やパーパス経営などと言われていますが、そんなカッコイイものではないものの、このメッセージを掲げて2020年から取り組んできました。これまでに2度、全42店舗を回って店舗従業員にメッセージの説明や意見交換を行いました。アナログ的ですが、私が模造紙に手書きしたものを使って説明しています。
コーポレートメッセージにも繋がることですが、当社は札幌や旭川に進出することはできませんから、十勝圏、釧根・根室圏といった地元のお客さまに「福」を届けるようにもっと知恵を絞っていきたい。経営資源を全て地元の人たちのために、集中的に投下していこうと社内では話しています。
ーー本日はどうもありがとうございました。