丸しめ志賀商店(本社・余市町)の「スーパーチェーンシガ」がアークス子会社のラルズ(同・札幌市中央区)に売却されることになり、道内食品スーパー(SM)の再編は最終章を迎えた。道内大手3極以外の独立系SMは売上高上位20社のうち数社に過ぎない。3極のうちどの極に入るのか、独立経営を保つのか――今年が最終選択の年になる可能性は高い。IMG_0197(写真は、余市町の北海信金本店前にあるスーパーチェーンシガ本店)
 
 ラルズは、丸しめ志賀商店のSM事業のみの買収を決め、従来のアークスによる株式交換を使ったM&A(企業の買収・合併)を取らなかった。丸しめ志賀商店のSM事業が13店舗75億円と規模が小さいため、子会社ラルズによる事業承継という形を取った。
 
 事業承継ということでは昨年10月のマックスバリュ北海道(本社・札幌市中央区)によるいちまる(同・帯広市)承継がある。いちまるの場合は複雑な方法で承継する形を取った。つまり、いちまるが全額出資の子会社を作り、その新会社をSM事業のグッドカンパニーとバッドカンパニーに分け、マックスバリュ北海道はグッドカンパニーを買収するというもの。いちまるにマックスバリュ北海道は40・53%出資していたことやいちまる生鮮センターは取引のあった食品卸の国分の権利もあった関係からこうした手法を取らざるを得なかったようだ。
 しかし、ラルズは丸しめ志賀商店と資本関係はなく、会社分割を絡めた手法を取る必要がなかったようだ。複雑に入り組んだ取引関係もなかったということもあるのだろう。
 
 丸しめ志賀商店は、志賀治夫社長が事実上一代で築いたSM。早大出身でひと味違うSM観を持っていた経営者だが、実際の店舗は他のSMとの差はなかった。違ったのはチラシの折り込みをしない独特の販促手法を使っていたこと。道央圏では週2回のチラシは当たり前。その中では異色のSMだったと言える。
 
 2年程前には、危機説が浮上、「国分が援助した」、「同じ余市出身の津司と手を結びそうだ」など噂が飛び交い、その時にアークスによる買収も囁かれていた。また、親族の死去も危機説に拍車をかけた。しかしメーンバンクとされる北海信金が支援の方向を示し危機説は通り過ぎた。
 
 丸しめ志賀商店は、商品の共同仕入れ会社である北海道シジシーのメンバーだったが、実際には賛助会員的な立場だった。志賀社長とアークスの横山清社長はSM経営者同士ということで親交があったが、同商店が北海道シジシーを2007年に離脱したことでその後の交流は殆どなかった。
 
 志賀社長は昨年12月、横山社長のもとを訪れSM事業の承継を要請した。地盤の余市町、小樽市では人口減少や高齢化によって事業展望が開けないほか札幌市や石狩市の店舗では他社との競合が激しく競争劣位に置かれ、後継者も見いだせなかったためだ。
  
 道内のSMは、アークスグループ、マックスバリュ北海道などイオングループ、コープさっぽろグループの大手3極が食品小売市場の約7割を押さえている。商品調達や販促面から独立系SMは、競争劣位に置かれる。働き手不足よるパート・アルバイトの賃金上昇も響く。
 横山社長は、北海道リアルエコノミーの取材で、「年商1兆円を目指すためM&Aのスピードを上げる」と語り、「勝ち組にこだわらない」姿勢を明言した。さらに、今年は「一緒にやるか、やらないかの即判断を求めていく」とも語った。
 道内上位20社のうちで資本的に独立しているのは5社しかない。大手グループに入るか、独立自尊の経営を続けるか、それぞれのSMに選択の期限が迫っている。


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