「十勝川西長いも」の栽培が始まったのは1965年ころ。長いもが北海道に入ってきたのは大正末期。もともと炭鉱経営者が炭鉱夫の栄養補給のために栽培したのがきっかけ。川西の長いもは夕張の種子が起源になっている。現在は十勝9農協で年間2万tを生産、押しも押されぬ有名ブランドになったが、2000年の雪印食中毒事件、翌年のBSE問題の影響で北海道農産物の風評被害が広がり長いもも影響を受けた。

「生産立て直しのために導入したのが生産履歴システム(トレーサビリティ)。以降、HACCP認証、十勝全体で安全安心を担保するための生産工程管理、十勝型GAP支援システムの導入、さらに2017年4月には米国小売協会を中心に導入されている包括的食品安全・品質管理システム「SQF」(セーフ・クォリティ・フード)認証も取得した。有塚氏は「徹底した品質管理で、現在は宇宙食用にも共同開発が進められている」と明かした。

 また、選果場で規格外品になった長いもの皮をむき、冷凍にして輸出する事業も予定。「冷凍とろろの工場は2018年度に稼働する。冷凍品は食物検疫の対象にならず工業品として輸出できる。また、皮も冷凍して乾燥させると消費に繋がるのではと研究を始めている」と話した。

 帯広市内にある北海道畜産公社十勝工場のHACCP対応施設が16年4月から稼働したことなどに触れ、「1日当たり国内最大450頭のと畜で発生する副産物を有効活用するため、帯広畜産大学などと農業界がベンチャー企業を立ち上げることも視野に入れている」と有塚氏。また、小豆の煮汁に含まれる酵素の商品化も検討するなど、「十勝で捨てていた農畜産物の副産物を産官学の力でどんどん有効活用していく。十勝の出口対策が広がっている」と講演を締めくくった。

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