北海道の倒産件数が2010年は前年比21%減の440件になったという。最も少なかったバブル期(1990年)の437件に次ぐ低水準。しかし、この統計は負債1000万円以上の倒産に限られており、道内に数多くある零細企業や個人事業主の1000万円以下の倒産・廃業はカウントされていない。いわゆる“隠れ倒産”は決して低水準ではないようだ。


 東京商工リサーチや帝国データバンクの倒産集計は毎月初めに公表される。地域経済の動向、先行きを見る上で欠かせない情報だが、2つの信用調査機関が取るデータは負債額1000万円以上の倒産。
 2010年1年間の倒産件数が、両社が統計を取り始めた1971年以降で過去2番目という低水準だったのは、信用保証協会の緊急保証と金融機関の金融円滑化法が倒産を抑制しているため。政府による資金繰り支援が、景気低迷期にもがいている企業を延命させている格好だ。
 こうした状態について、企業再生に詳しい橋本昭夫弁護士は「政府の資金繰り支援に再生支援策が組み込まれなければ、単なる延命措置に終わってしまう」と述べている。
 さて、1000万円以下の倒産はどのくらいあるのか。結論からいうと、その数は統計から除外されており正確には把握できない。
 こうした“隠れ倒産”がジワジワと道内に増えているのは、地方の商店街などを見れば体感できる。
 例えば、岩見沢や滝川のJR駅前にある“目抜き通り”の商店街は、櫛の歯が欠け、時が止まったような静寂が広がっている。こうした地方都市で個人商店を営む商店主たちは、子息たちに商売を引き継がせずひっそり廃業していくケースも多い。
 こんな“隠れ倒産”によって引き起こされるのが、そこに融資している金融機関の不良債権増だ。中でも、協同組織の地域金融機関として零細企業や個人事業主を融資対象にしている信用組合にとって、それは深刻な問題だ。
もちろん、借入を弁済したうえでの廃業なら不良債権には入らないが、いずれにしてもこうしたケースが続けば地方の経済力は一段と低下する一途だ。
 信用組合の関係者はこう言う。
「小企業や個人向けの制度融資もお腹一杯になるほど用意されているが、肝心の使う側が躊躇している。制度融資でお金を借りても、返済の目途がないから借りたくても借りられない状況なのです。これは経済政策と金融政策のミスマッチそのもの」
 ミスマッチが増幅して現れるのが、地方経済。“隠れ倒産”は、政府の犠牲になっており、それは表には出てこない。年度末に向けて“隠れ倒産”の増加が、信用組合の体力をジワジワと奪っていきそうだ。


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