「札幌市の経済は、北海道の経済を牽引する力があるのか」ーー札幌市の経済力を分析、福岡市と比較したレポートが注目されている。まとめたのは、北海道電力経営企画室調査役の阿部欣司氏(64)。阿部氏は、「札幌市の2015年度の北海道に占める総生産額(名目)は6・6兆円で北海道(19兆円)の34・6%を占めているが、人口シェア36・3%、生産年齢人口シェア38・8%を下回っている」とし、「総生産額をベースにした分析からは最近の札幌は単独では北海道を牽引する力があるとは思えない」と述べている。(札幌市の経済には課題が浮き彫りになっている=写真は札幌市役所屋上から見た中心部)

 阿部氏は、福岡市の経済とも比較。産業別の生産額で札幌市が上回っているのは、保健衛生や建設業などわずかな業種で、生産性はほとんどの業種で福岡市が上回り生産額も04年度から差が開いていると指摘。「経済成長は95年度までは札幌市が福岡市を上回っていた。96年度からは横ばい状態で04年度からは差が開いている。札幌市の生産年齢人口が減少に転じたのは05年度からで、そこから札幌市経済は福岡市に差を付けられ停滞している。経済環境だけでなく人口構造の変化の影響も大きい」とする。

 福岡市は、札幌市を大きく上回る若者人口の転入超過がある。高齢者の転入や若者の首都圏への流出も札幌市を下回って生産年齢人口は増えている。しかし、福岡市も札幌のように生産年齢人口が減る時代が確実にやってくる。そのことに対応するため、福岡市は卸売以外の付加価値の高い新たな成長エンジンを育成すべく市長が先頭に立って国の特区制度を活用、シアトルをベンチマークにした“スタートアップ都市宣言”を行っており、新規開業率は全国トップの成果を出している。

 阿部氏は、「道内マーケットの縮小、札幌市の生産年齢人口減少、高齢者人口の急増がわかっていながらこの壁を乗り越える有効な施策を行政も民間企業も打ち出せていないのが停滞の原因ではないか。多くの質の高い人材を育成し、札幌、北海道に定着しやすい環境をつくること。また他の地域で経験を積んで札幌、北海道に戻ってきてもらう仕組みの構築が大事。さらに進学率が低く生活保護率の高い女性が活躍できるようなサポートも必要」としている。


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