札幌証券取引所は27日、起業家支援のインディペンデンツと共催で「北海道企業の戦略」と題したセミナーを開催した。ベンチャーキャピタルの北海道ジャフコ社長としてベンチャー企業投資などを通じて北海道経済の活性化に寄与してきた経験のある米沢則寿・帯広市長が講演。「フードバレーとかちの取り組みで、十勝の時価総額を高める」と帯広をはじめ十勝全域の産業政策マネジメントを説明。十勝の基本価値を見直した上で付加価値を高めるために農業者、中小企業、地域が同じ方向性に向かうための旗印として「フードバレーとかち」という独自の経済成長戦略を活用することを強調した。(写真は、講演する米沢則寿帯広市長)
 
 米沢市長は、北海道ジャフコ社長時代に北大アンビシャスファンドを創設。産学連携ファンドの全国第一号として電子カルテのシーエスアイ(東証マザーズ上場)に投資するなどしてきたが、2年前に帯広市長に立候補。
 
「産官学連携のネックだったのは官のスピードが遅く道内各地域の経済成長を進める産業クラスターが進まなかったこと。市長に立候補したのはその時のリベンジという意味もあった」と述べ、帯広では行政が民の仕事にも口を出し、歩みの遅かった官の意思決定スピードを早める取り組みを職員全体に浸透させようとしており、「これまで市の職員が外に出ることは殆どなかったが、生産者や企業に積極的に訪問しており、その件数は昨年9月までに280件にも及んでいる」と市職員の意識改革が進んでいることを強調した。
 
 十勝の農畜産物売上額は2402億円で全国の2・8%を占めているが、畑作4品では30%にも及ぶ。しかし、地元で生産される農畜産物を使った食品加工の売上げは3079億円で付加価値率はわずかに1・28倍。「十勝の農産物は加工されずにそのままの形で本州に出荷されている。北海道全体で見ても農産物の付加価値率は1・83倍だし、九州でも1・68倍。なぜ十勝がわずかに1・28倍なのか。震災以降はサプライチェーンの見直しが進んでおり、その流れから見ても産地で加工するのが一番安全で安心。付加価値を2倍に引き上げたら5000億円の規模になる」と語り、その戦略的取り組みが、「フードバレーとかち」と紹介した。
 
 国際戦略総合特区のフードコンプレックスに認定されたことにも触れ、「道内の認定地域には札幌市や江別市、函館市もあるが、十勝は管内市町村すべてが認定されており面として活動できる」と十勝のポテンシャルにも言及していた。
 
 米沢市長は、セミナーに集まった企業関係者に「政府が示している農業再生モデルは既に十勝に現存している。アジアの食の拠点として農業分野で日本を成長させるのは十勝。企業の皆さんが主役ですから食・農に関心のある方に来てもらってチャレンジしながら一緒にフードバレーとかちを楽しもう」と行政の殻を破ったプロモーションを仕掛けていた。


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