星野リゾート・星野佳路代表インタビュー「道民のセコマ愛と繋がり、持続可能な北海道観光をつくる」

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 ――道内のホテル業界では、高級価格帯が伸びているようです。道内の事業者をどうみていますか。

 星野 地場ホテル事業者の高級価格帯の需要が伸びているという認識はありません。収益ベースで言うと、おそらく比較的大きな施設の収益が大きいと思います。高級価格帯を手掛けていくビジョンは大事ですし、それを展開していることはとても重要です。しかし、高級価格帯の施設は投資負担が大きいため、投資額に対して上がってくる収益は、それほど連動していない。
 私たちは高級価格帯の「星のや」や「界」で、相当な工夫をしています。星野リゾート・リートのような投資家から見て、投資に値するだけの収益率を確保するには、単に高級価格帯の施設を造って稼働しているだけでは充分ではありません。それにプラスして、様々な工夫を加えないと収益は出てきません。

 ――2022年1月14日にオープンした白老町の「界 ポロト」は北海道初の「界」ブランドですが、今後も道内で「界」ブランドを増やしていきますか。

 星野 オーナーや投資家、開発会社から声を掛けていただき、候補地に最適なサブブランドを提供していくのが基本です。「OMO」(おも)が良い地域には「OMO」を提案しますし、「界」が良い地域には「界」を提案します。私たちの場合、設計と企画だけではなく、運営も担当しますので、この地域のこういう場所であれば、このブランドの運営が投資回収率、利回りが一番高くなると提案していくことも仕事の一つです。

 ――星野リゾート・リート投資法人という J-REITとの関係は。

 星野 星野リゾートは、全国55施設を運営していますが、J-REITの星野リゾート・リートが持っている施設はそのうち22施設で、残りの施設は、違うオーナが所有しています。星野リゾート・リートは、長く一緒に仕事をしてきたスタッフが経営陣に入って経営しています。相乗効果を出していこうと協調していますが、金融庁の基準で私は向こうの経営には関われないし役員にもなっておらず、オフィスに入ることも禁止されています。厳格なルールを守りながら、リートの自立性を維持しています。

 ――星野リゾート・リートは、別のホテルもポートフォリオに組み込んでいるのですか。

 星野 当然、別のホテルも所有しています。日本の観光産業の成長に投資をしようとした人たちが、リートを買ってくれています。日本の観光産業の成長を考えた時、星野リゾートという運営会社には、不得意な分野もあります。例えばロードサイドインがそれですが、ロードサイドインは需要が伸びていて、専門の運営会社であるチサンインの施設を星野リゾート・リートは所有しています。

 ――投資利回りは、4~5%くらいでしょうか。

 星野 リートの利回りは5~6%ですが、開発はハイリスクですからファンドに入ってもらい10数%のリターンが必要になります。土地取得から仕込んでいくリスクに見合ったリターンは、このくらいなければなりません。星野リゾートは、企画も設計も行って開業まで持ち込みますが、開業して1~2年で期待している収益は出るので、その段階で、ファンドは施設を売却します。結果的に、開発にかかったお金と売却によるリターンを差し引いて10数%になるというのが、私たちが提案している内容です。売却する時の買い手として、安定的に5~6%の利回りが出るのであれば、星野リゾート・リートは投資を検討してくれます。
 私たちは、リートがポートフォリオに組み込んでくれる条件を理解しています。そのため、開発段階からリートが検討しやすいように、条件を整えながらプロジェクトを進めています。もっとも、いくら条件を整えても、最終的に成立しないこともあります。できるだけ、リートの人たちにも最初の段階から入ってもらい、彼らの感触を聞きながら進めています。

 ――北海道観光の将来をどうみていますか。

 星野 北海道は世界的に見ても、東京、京都に次いで名前が知られていますから、大きなポテンシャルがある。ただ、先ほどお話ししたように課題はたくさんあります。その課題を、北海道全体として解決していけば、世界でも有数の観光地になり得る資源があります。マイクロツーリズムの道内観光客、日本の首都圏、関西圏からの観光客、インバウンドの三層構造をしっかりと維持することが大事ですが、インバウンドではアジア圏ばかりを見るのではなく、欧米豪から一定の集客をすることが必要でしょう。中国、香港、台湾の中華圏の人たちが行きたいと思う観光地は、欧米人が行っている観光地だからです。欧米に人気があると、中華圏の人たちにも人気が出ます。
 欧米豪の人たちが、スイスやカナダではなく北海道に来るというパターンにならないと、本当の意味で持続可能な高い収益を生む観光地にはならない。そういう戦略を北海道全体で練っていくことが、本来のポテンシャルを生かすことになると思います。

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