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 ――「No Maps」の具体的な中身はどんなものでしょうか。

 伊藤 「No Maps」では、作る、学ぶ、考える――そういうシンポジウムやセミナー、セッションを中心に組み立てています。街を使った音楽や映画のフェスによって、いろんな角度からクリエイティビティーをアジテートしていく。コラボレーションはすごく大事な考え方で、立場が違う様々な人がこの機会に日本中から集まって意見を交わしながら新しい組み合わせを作り上げていくことを北海道からスタートしていければ良いと思っています。
 
 人工知能によって人間の仕事が置き換えられていくなど変化の時代ですが、遅かれ早かれいろんなものが新しい技術で代替されていく時代になるでしょう。北海道こそ、そういった新しいことにチャレンジする「最先端技術の開拓地」になるべきではないかと考えています。日本、世界の最新テクノロジーを実証する最先端基地として未来の社会を北海道が牽引していけるのではないか。
 
 JR北海道が赤字続きで路線を縮小して負担を軽くしようとすると、100年前の路線図に戻ってしまうようなことが話題になっています。インフラはどんどん古くなっていくので維持するコストを軽くする方向に向かうのは仕方がないと思う。では末端の交通、二次交通はどうするのか。
 
 例えば、自動走行車とか自動走行のバスなど、北海道の中でそういう新しい技術を使うことによって北海道の社会自体が恩恵を受ける面が大きいと思う。率先して北海道で実証実験をして、新産業を育てれば日本や世界に向けた新しい産業のハブ基地として北海道を活用していくこともできます。そういったこともNo Mapsの中で取り組んでいきながら、新しいことに関わっていける機会にしたい。

 ――伊藤社長の以前からの思いが「No Maps」に集約している感じですね。

 伊藤 北海道は食べ物にしても自然環境にしても、他の地域と比べて優位なところがたくさんあります。だけど十分に付加価値が付けられていないために他の地域に負けている部分もあります。そこがすごく僕自身は気になっていて、もっと良くなれるはずだといつも思っています。もっとやれることがたくさんあるのに、やっていないから良くなれない。もっと良くなれるきっかけづくりを「No Maps」でやれたらと思っている。

 ――昨年のプレ大会では、地下歩行空間でVR(バーチャルリアリティ)のイベントをするなど様々なインパクトがあったと思います。昨年との違いはどういう点にありますか。

 伊藤 昨年は『サウス・バイ・サウスウェスト』というテキサスで開催されている「No Maps」のベースになったイベントを意識して開催しました。音楽、映画、テクノロジーという3つの柱でそれぞれ行いましたが、今年は3つに分けることを見直しました。
 
 会議、展示、興行の3つを軸に、交流と実験という2つのコンセプトを加えました。一方的に講師を呼んで講演を聞いて終わりでは面白くないので、講演後に軽い飲み物とスナック菓子を用意して関心のある人たちが集い、交流するMeet-Upイベントも多数開催します。そこで意気投合して「じゃあ、こんなことができるかな」とか、「こんなことをしてみよう」という機会にしていただきたい。

 新しい技術開発は、バーチャル空間ではなくリアルな空間の中で起きてくると思っています。例えば自動走行車もバーチャル空間を走るのではなくて、本当の街を走らせる。そうするには、自治体や警察など、実験をする地域の許認可が必要になるしコンセンサスづくりも必要です。自動走行車を走らせたい企業が一方的に宣言しても難しい。「No Maps」には、道も市も実行委員会の中に入っていただいているのでこうした話を進めやすい環境にあります。前例のない取り組みをすることによって未来が開かれることを自治体や企業、農業団体、観光協会などの人たちに知ってもらいたい。「じゃあ、次は私たちの街でこういうことをやろう」という話ができる場づくりのために「実験」というテーマを加えました。



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