10月5日から15日までの11日間、北海道・札幌が未来の扉を開く。開拓という言葉が似合うこの地で、クリエイティブな発想や技術によって次の社会を創るフロンティアスピリットを持った人や企業、大学・研究機関、自治体が集い、北海道から未来を発信していこうという取り組みだ。「No Maps」と命名されたコンベンションの目的と意義について実行委員長の伊藤博之クリプトン・フューチャー・メディア代表取締役に聞いた。(※No Mapsというネーミングは、ウィリアム・ギブスンというSF小説家が作った短編映画のタイトルから採用している)IMG_6805(写真は、リアルエコノミーのインタビューに答える伊藤博之社長)

 ――昨年はプレ開催がありましたが、10月5日から始まる「No Maps」の開催意義について、あらためて伊藤委員長の思いを聞かせてください。

 伊藤 「No Maps」は産業育成系のイベントで、世の中を活性化して高齢者や若者にも生きがい、生きる意義を感じてもらうのが目的です。自分で「こうしたい」など自分の意志をしっかり持って何かをすることはすごく大切。
 北海道の人は、とりわけそのあたりの意識が薄くなっているような気がしています。道路の建設や河川、海岸の護岸工事のために予算が付いて土建業が潤い、町の飲食店も潤うという公共投資の時代がすごく長かった。北海道の人は自分で努力するより、予算を握っている人と親しくなって「予算を下さい」という意識が強いのかなと感じます。
  
 そんな時代は既に終わっているにもかかわらず、未だにそういった古き経済の残骸で生きているようなところがあると思います。それは今の若者や企業にも残っていて、例えばITは比較的新しい産業ですが、北海道では独自製品を作るIT企業はそれほど多くなくて、大手ITゼネコンをクライアントにして仕事をもらう下請けタイプが圧倒的に多い。結局、自分で作るのではなくて受託して作るという構造が土建業から始まってIT業でも多い。
 
 そんな“寄らば大樹の陰”のメンタリティーがどの産業でも北海道にずっと付きまとっている気がします。私は自らの足で立つ道民性を取り戻す必要があると考えていて、「No Maps」はその象徴的イベントだと思っています。

 ――かなり奥の深い問題意識からスタートしているイベントですね。

 伊藤 開拓のころは、おそらくそういう意気込みで北海道に移住してきた人ばかりだったと思う。だけどいつの間にかハングリーさが消え、親方を見つけて頼って生きていくような道民性になってしまったように思います。もう一度、自分たちの力で立ち、自分たちの手でどんどん付加価値をつけていく道民性を取り戻すことが必要ではないかと強く思っています。
 
 例えば食に関して、原材料として本州に出荷する額と加工食品など付加価値をつけて出荷する額の比率は全国平均から見ても少ないことが、北海道経済の課題の1つと言われています。クリエイターと呼ばれる人たちは付加価値をつける人。絵を描いたり音楽を作ったりするのもそうですが、まちづくりや教育、産業を創造するのもクリエイターの仕事。そういうクリエイターこそ、北海道にすごく必要です。クリエイターと既存の産業がうまくタッグを組むことによって、いろんな可能性が出てくる社会になっていけば良いと思っています。



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