ステージゼロのがんリスクも測定できる尿がん検査「マイシグナル」を全国で提供している名古屋大学発ベンチャーのCraif(本社・東京都文京区)は、利尻町、利尻島国保中央病院と連携し、利尻町民のがん検診受診率を向上させる「がん検診推進プロジェクト」をスタートさせた。現状の20%台から、3年間で3倍増の60%に引き上げることを目標に、検診機会の増加や町民への動機付けを行い、早期発見、早期治療に繋げる。(写真は、「がん検診推進プロジェクト」の記者発表。左から慶応義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット特任教授・加藤容崇氏、Craif代表取締役CEO・小野瀨良一氏、利尻町町長・上遠野浩志氏、サツドラHD代表取締役社長CEO・富山浩樹氏)
連携のきっかけは、Craifの小野瀨隆一CEOが、5年以上前から利尻島の自然に魅了され通うことになったこと。地元の若手漁師などと親交する中で、知り合った仲間をすい臓がんで亡くし、医療を受ける機会が少ない離島でのがん検診の必要性を痛感。ちょうどその頃、利尻町の上遠野浩志町長も役場仲間をすい臓がんで亡くした。このタイミングで、利尻町への貢献を考えていた小野瀨CEOと上遠野町長が出会い、医療資源の少ない離島で予防医療に取り組むことで合意、今回の連携協定の締結に至った。
Craifは、2023年2月、北海道大学や旭川医科大、サツドラホールディングス(本社・札幌市東区)などと「マイシグナル」を用いたがんの早期発見・早期治療に向けたコンソーシアム「CRUSH-Cancer(クラッシュキャンサー)」を設立、岩内郡岩内町でステージゼロの肺がんを発見・治療に成功している。
今回は、このコンソーシアムの第2弾の取り組みとなるもので、離島という閉ざされた中で、がん検診を入り口とするがんの早期発見・早期治療の利尻町モデルを構築、パッケージ化した仕組みとして、全国に発信することを目標にしている。具体的には、これまで検診車による検診に加えて、利尻島国保中央病院の個別検診も加えるなど受診機会を増やすことや、商品券の付与、「マイシグナル」の提供など受診の動機付けを実施。ヘルスケアデータを集約活用し、継続的にがん検診を受けられる仕組みづくりも予定している。
連携協定は、2025年6月24日、サツドラ北8条店2階のEZOHUBで行われた。小野瀨CEOは、「利尻町で、がんの課題を解決する社会実装を実現したい。検診と『マイシグナル』を組み合わせて、利尻から日本、世界に通用する社会モデルをつくっていく」と話した。上遠野町長は、「Craif、地域、病院、商店、学校、町民が一体となってがん対策に取り組む。このプロジェクトは、受診率向上にとどまらず、がんで亡くなる方を減らし、地域全体の健康度向上のための新たなモデルになると考えている」と力を込めていた。利尻町の人口は、2025年5月末で1819人、世帯数1014世帯。