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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第7回は、月形町の「月形樺戸博物館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第7回 「月形樺戸博物館」 ―開監から39年の歩み伝える―

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月形樺戸博物館本館

 空知管内月形町の中心部にある町役場の隣に、月形樺戸博物館が建っている。
 この博物館は旧樺戸集治監本庁舎、月形樺戸博物館本館、農業研修館の三つからなっており、樺戸集治監の開監から廃監までの歩みを伝える貴重な施設だ。
 明治維新直後、佐賀の乱、神風連の乱、萩の乱、西南の役など、新政府に対する旧士族による反乱が全国各地で起こった。その一方で、自由民権運動がしだいに活発化し、その裏では政治犯や重罪人が急増し始めた。
 こうした中、伊藤博文内務卿は、未開の地に反乱分子、政治犯や凶悪犯を隔離し、彼らの労力を駆使して開墾に従事させ、自給自足させれば、監獄経費の節減になるとして新政府に提案し、その受け皿となる地を北海道に求めた。

 シペツプト(川の合流する地点)と呼ばれていた月形は、背後にヒグマが生息する樺戸の山々を控え、前面には滔々と流れる原始の大河石狩川や密林があり、逃亡困難な自然の要塞であった。
 しかも、土地は肥沃で、将来の農耕にも適していた。
 そこで、この地が最終的に選ばれ、明治14年(1881)、北海道で最初(全国で3番目)の集治監「樺戸集治監」が建てられた。
 初代典獄には月形潔(福岡県出身)が就任し、同時にこの地を開拓するために移住して来た人びとによって、空知管内最初の村、「月形村」が開村された。
 月形樺戸博物館を構成する三つの施設のうち、旧樺戸集治監は、明治14年の集治監発足時に建てられた。
その後、同19年に焼失したが、すぐ再建され、大正8年(1996)に廃監されるまで、事務所として使用された。

 それ以降は、町役場の庁舎として使用されたが、昭和48年(1973)には北海道行刑資料館となって一般に公開され、平成8年(1993)、現在の名称となった。
 ここには典獄室、副典獄室が再現され、150分の1の集治監全体の模型なども展示されている。

  月形樺戸博物館本館へ行くには、地下通路で繋がっている。外壁にレンガを張った鉄筋コンクリート2階建ての重厚な建物で、より多くの集治監資料を展示するため、平成8年に建てられたものだ。
 館内には、集治監の建設とその後の歩み、受刑者の服、上水道施設などの写真や資料が、所狭しと展示されている。
 中でも初代典獄の月形潔に関する展示は目を引く。月形町の由来となった人物で、月形の開拓にも貢献したが、過労から明治27年、46歳の若さで逝去している。

 そのほかにも、五寸釘(西川)寅吉など有名な受刑者のエピソードや、3年間、ここで看守らに撃剣を教えた元新選組の隊士永倉新八の記録など、興味深い展示物がある。
 また、2階には、集治監と月形村の関係を紹介する映像シアターも設置されている。
 農業研修館は、月形町の開拓に血の汗を流した先人たちの記録を展示しており、樺戸集治監も農事監獄として始まったことがわかる。
 樺戸集治監は、開監後、樺戸監獄署、北海道集治監本監、樺戸監獄など、数回の組織・名称変更をたどったが、大正8年に廃監されるまでの39年間、多数の受刑者を収容した。
 多いときには1,300人が服役している。

 受刑者たちは、赤い服を着ていたことから、「赤い人」と呼ばれていたというが、明治20年代から現在の国道12号をはじめ、北海道の主要幹線道路を次々と完成させていった。
 道路建設に限らず、屯田兵屋の建設、石炭採掘など、北海道の開拓に集治監の受刑者が残した功績は大きい反面、過酷な労働を強いられていたことがわかる。
 なお、月形町1011番地には、法務省所管の「月形刑務所」があるが、この施設は、昭和58年(1983)に東京の中野刑務所が廃止され、これに伴って置かれたものだ。

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旧樺戸集治監本庁舎

利用案内
所 在 地:樺戸郡月形町1219番地 TEL:0128-53-2399
開館日時:4月~11月(無休) 午前9時30分~午後5時
休 館 日:12月~3月(冬期間)
入 場 料:小中学生100円、高校生・大学生150円、一般300円(団体10人以上はいずれも50円引き)
交通機関:札幌から国道275号を車で1時間、JR学園都市線で1時間30分、月形駅下車5分

付近の見どころ
皆楽公園(樺戸郡月形町皆楽公園内)
水と緑が調和した自然公園で、27㌶の広大な敷地にキャンプ場、バーベキューコーナー、パークゴルフ場などがある。公園の周囲は3キロ㍍のサイクリングロードになっていて貸し自転車も置かれている。へら鮒釣りでも有名。
 開園期間は4月下旬~10月31日。
予約・問い合わせは皆楽公園管理課 電話0126―53―2577
 このほか、月形町には、月形温泉ゆりかごや多目的アリーナなども整備されている。

文・写真 北国 諒星

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