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 「北のミュージアム散歩」は、道新文化センターのノンフィクション作家を育成する「一道塾」(主宰・合田一道)の塾生が書いた作品を連載するものです。道内にある博物館、郷土歴史館、資料館などを回り、ミュージアムの特色を紹介しながら、ミュージアムの魅力やその存在する意味を問いかけます。
 第8回は、札幌市の「北海道大学総合博物館」です。ぜひご愛読ください。

(合田一道)

■第8回 「北海道大学総合博物館」 ―北大の過去現在未来を知る―

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北海道大学総合博物館

 北海道大学の構内に入ると、都会の喧騒を忘れる。東京ドーム38個分にも相当する広い敷地に、自然に囲まれた一つの街が出現する。樹齢100年を超えるエルムの巨木の間から、昭和4(1929)年に、旧北海道帝国大学理学部本館として建てられた茶色の建物が見える。平成11(1999)年4月より、北海道大学総合博物館となり、平成28(2016)年7月、耐震補強工事が完成し、リニューアルオープンした。
 大学の博物館の使命は、学術標本や資料を収集保管し、教育と研究に提供すること。そして、次世代へ継承することであろう。約400万点にも及ぶ貴重な収蔵物は時代の流れと共に、大学の中のみならず、一般の人々にも広く公開されるようになった。

 入口のロマネスク・ゴシック様式の尖塔アーチをくぐり、中へ入いる。ひんやりとした薄暗い建物の1階は、「企画展示」と「常設展示」に分かれる。
「企画展示」は年に2回、夏と冬にテーマが変わり、展示物が新しくなる。
「常設展示」はいくつかのテーマ毎に、分かれて展示されている。最初に「北大の歴史」が綴られている。明治9(1876)年に始まる、札幌農学校の精神や北大の学風、クラーク博士の教え、内村鑑三、新渡戸稲造、有島武郎らに代表される卒業生や、平成22(2010)年にノーベル化学賞を受賞した鈴木章博士の業績へと、北大のフロンティア精神の流れが展示されている。

 1階から2階へ続く「北大のいま」のコーナは、現在の北大の理系文系12の学部と8つの研究所で行われている、教育と研究が紹介されている。「北大の探究心」では、大学の最先端の研究を見ることができ、「感じる展示室」では目だけでは伝わらない情報を、実際に手で触ることによって感じることができる。ただ眺めるだけではなく、音を聴いたり、感触を確かめたり動かしたりと、体験することで、科学への興味を駆り立ててくれる。
 3階の「収蔵標本の世界」は、植物や考古遺跡などの標本が並ぶ。恐竜の骨格や古代生物の標本もある。古代から生き続けてきた化石たちは、見る人に何を語りかけてくるのだろうか。

 1階から昇ってゆく階段は、木造のすり減った階段である。手すりはピカピカに磨き込まれて、寄木細工の床板は歩くと音がする。3階まで昇りきると、アインシュタインドームと名付けられている、白い天井のドームが出現する。東西南北の壁には、フランス語で朝昼夕夜をあらわす4つのレリーフがはめ込まれている。東の朝は果物、南の昼はヒマワリ、西の夕方は蝙蝠、北の夜はフクロウの絵が描かれている。すなわち、この建物で行われる教育や研究は一日中、昼も夜もなくおこなわれていると。この建物が造られた当時の人々の、心意気と努力、理想が示されている。展示物だけではなく、この建物全体が一つの博物館なのであり、北大の魅力を教えてくれる。

 ここの運営は職員や学生の他に16のボランティア部門に分かれて、200名以上のボランティアの活動によって支えられている。また、卒業生をはじめ多くの個人・法人から「北大フロンティア基金」に募金が寄せられている。
 一般市民に対する生涯教育の一環として、随時公開講座も開かれている。

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アインシュタインドーム

利用案内
所 在 地:札幌市北区北10条西8丁目 TEL:011-706-2358
開館時間:10:00~17:00(6月~10月の金曜日は10:00~21:00)
休 館 日:月曜日、12月28日~1月4日(月曜日が祝日の場合は開館し、連休明けの平日が休館日となる)
     ※大学行事等で臨時閉館・休館の場合がある
入 館 料:無料
交通機関:JR札幌駅北口より正門まで徒歩7分、正門から博物館まで徒歩5分

付近の見どころ
北海道の開拓と共に歩んできた北大には、いたる所に歴史を感じさせる建造物がある。代表的なものとして、札幌農学校第二農場(北18西8)をあげる。クラーク博士の大農経営構想により、一戸の酪農家をイメージして北海道の模範農場を作った。家畜小屋や穀物庫、アメリカから取り寄せた農機具などを展示している。昭和44(1969)年に国の重要文化財に指定された。屋外公開期間は通年、8:30~17:00まで。屋内公開期間は、4月29日~11月3日。公開時間は、10:00~16:00。休館日は、毎月第4月曜日。

文・写真 山崎 由紀子

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